「ゴジラ博 in 大阪」 破壊されていく大阪の景色は、東京破壊とは異なる強烈な印象を与える
羨望! 「大阪」ならではの楽しみ
みどころは、千差万別。観覧者の数だけあるに違いない。筆者のような古参は、共に歩んだ時代をしみじみとかみしめ振り返るという、かび臭い鑑賞(感傷?)法なのだが、モンスターファン、特撮ファン、最近の映画ファン、細部にこだわる独特なファン……皆面白がって体験してほしいのだが、「大阪」ならではの楽しみがあるに違いない。 まず、うらやましいのは、東京になかった「フライング・メカ」コーナーができるらしいではないか。どのくらい展示されるのか本稿執筆時点では把握していないが、自衛隊機F86セイバーからかしら。Ⅹ星人の脳波コントロール式円盤もすさまじく格好良かった(1965年末「怪獣大戦争」)。未来からやってきたタイムマシン「マザー」もナイス(91年末「vsキングギドラ」)。スーパーⅩ系(84年末「ゴジラ」など)、田中美里が命がけで操縦したグリフォン(2000年末「×メガギラス」)も忘れられない。もちろん「-1.0」(23年秋)の震電は言うまでもない。ヘドラ戦の時のゴジラ飛翔(ひしょう)態勢も展示されるのであろうか。であれば、大阪まで見に行く! ともあれ、羨望(せんぼう)の限りである。 もう一つは、映像の記憶と大阪の景色とを重ね合わせることであろう。大阪は当然、ゴジラ作品に何度も登場している。「×メガギラス」(2000年末)の時は首都になっていたほどである。だが、古参のお薦めはやはり原点の2作目「ゴジラの逆襲」(1955年春)である。モノクロームの暗い光の中で破壊されていく大阪の景色は、いつもの東京破壊とは異なる強烈な印象を与える。 もう1作上げるとすれば「vsビオランテ」(89年末)だ。関西空港がまだ埋め立て前の工事中であり、その海上ヘリポートで三枝未季がたった一人でゴジラと対峙(たいじ)するシーンや大阪から原発銀座・若狭湾を目指す深夜のゴジラ歩行シーンは、数あるゴジラ作品の中でも指折りの名場面である。この歩行シーンは、ティム・バートン監督のSF映画「マーズ・アタック!」(96年)に火星人たちが本作をテレビ鑑賞している場面で使われている。ちなみに「マーズ・アタック!」で火星人たちを撃退する「武器」が大音量のカントリー音楽だったが、これも「怪獣大戦争」でⅩ星人を撃退する「レディガード騒音作戦」の本歌取りであろう。