「先生に渡しましたよね?」…出願届けをなくして受験失敗。全部他責のモンスターペアレントがとった「ヤバすぎる行動」
危機管理専門家も「難しい判断」と分析
昨夏、文部科学省が公表した文部科学白書は、危機感に満ちあふれたものだった。 懸念されているのは、「社会問題化している教員の長時間労働」だ。 「5時間もかけて何しに来た?」年末帰省もゲーム一色の孫と嫁。失われる「日本人らしさ」に60代姑がげんなり「もう来ないで」と思った理由。 危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が解説する。 「白書は、現場の働き方改革を進めるために、「教師でなければできないことに教師が集中できるよう、業務の適正化を図る必要がある」と指摘しています。 在職教員に対する施策としては、タブレットなどの端末を鉛筆やノートと並ぶ「マストアイテム(必需品)」だと強調したうえで、小中学生に1人1台の学習用端末を配る「GIGAスクール構想」をさらに推進していくことが現状の改善につながるとしていますが、AIなどの先端技術によって社会のあり方そのものが劇的に変わる可能性もある。教育現場は難しい判断を迫られているんです」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「電子出願は、良い方向の変化だと思います」 そう話すのは、教員歴6年の美咲さん(仮名)28歳だ。
美咲さんが話しているのは、大学入試センターが2025年度に実施する「大学入学共通テスト」から電子出願を導入する方針を固めたことを指している。 今までは高校とセンター間で願書などの送付が複数回行われており、教員に対する負担が大きいだけでなく、コストもかかっていた。センター手続きのオンライン化により、教員の仕事が一つ減った……と考える教師は少なくない。
「今現在は、受験生が記入した願書と検定料の払い込み証明書を高校がとりまとめて、大学入試センターに送付しています。 その後の確認や修正なんかも、何かが起きるたびに郵送で行わないといけないので、われわれ教員の負担だけではなくて、生徒自身の負担も大きいと思います。 もうすでに、国公立大学や私立大学の一般選抜では、試験の9割以上が電子出願を導入しているので、共通テストに対する電子出願の導入は、遅すぎると思いますけど……。 まあ、50万人ほどが受験する共通テストですから、システムの安全性や安定性が求められるのは当然ですし、実現に時間がかかってしまったのも仕方のないことなのかもしれませんね」 彼女は教員になってから2度ほど受験生の担任を経験し、共通テスト出願の時期に、寿命の縮むような思いを何度も味わったそうだ。 「私ではありませんが、私の隣の席に座っておられた先生が、生徒から預かった願書をなくしたことがありました。でもそれも本当にその先生がなくされたのか、その受験生がなくしてしまったのかが本当はよく分からない状態で……」 美咲さんによると、彼女の隣に座っていた先生は、ある一人の生徒が願書を提出してこないので、「早く提出するように」と何度も促し、それでも提出してこないので、他の受験生の分を先に大学入試センターに送付したそうだ。 しかし、4度目か5度目の催促をする先生に向かってその生徒は、 「先生に渡した」 と言い始めたのだとか。 「私は隣で見ていたので、その生徒は提出していなかったと思いました。 もちろん私が席を外しているときに提出した可能性はありますけど、大事な願書でしょう? 誰も大人がいないときに、先生の席に何も言わずに置いていくということも考えられませんよねえ。 私の隣の席の先生も、『手渡された覚えはない』って言うし……。ですが大学入試センターから送られる受験票の中にその生徒のものはなかったので、どちらがなくしたかはともかくその先生はすぐに再発行手続きをしました」 受験票を紛失または汚損、破損した場合、再発行することは可能だ。美咲さんの隣に座っていた先生は、慌てて再発行手続きをして、その生徒が受験できる状態にしたそうだ。 「受験票再発行等申請書というものが存在するので、必要事項を記入し大学入試センター事業第1課まで郵送で提出するんです。とにかくその再発行手続きで、問題解決だとみんな思っていました」
美咲さんの言葉が重くなった。 「その生徒の保護者の方が学校に怒鳴り込んできたんです。『お前たち、どう責任を取るんだ!』と叫びながらお父様がいらっしゃって、私の隣の席の先生は『預かった覚えがない』とお答えしするしかできず…」 ☆教師の主張は届くはずもなく、なくした願書をめぐって、事態は揉めに揉めることになる。衝撃の後編につづく☆ 取材・分 八幡那由多