古い古い友人の話 ~ジャパンのバンクーバーでのカナダ戦を前に~
パシフィック・ネーションズカップのプールBの一戦だ。しかし個人的には大会をはなれて、ひとつの「テストマッチ」としてとらえたい。なんといってもカナダは日本ラグビーの恩人、いや、ちょっと違うな、古い古い友人なのである。
1930年、昭和5年、日本代表が初めて編成された。オリジナルのジャパンである。12日間の船の旅。8月17日から10月15日にかけてカナダ遠征に臨んだ。
6勝1分けの結果を残した。バンクーバーやビクトリアの選抜を順調に退けて、実質の国代表であるブリティッシュ・コロンビア州代表とは3-3のドローであった。
当時の遠征メンバー、早稲田大学の名CTBとしてとどろいた柯子彰さんの話を1998年に台北の自宅で聞いた。
「在留邦人は最初は歓迎しなかった。負けたら子どもがいじめられると。でも、どんどん勝つでしょう。最後のほうはデパートのウインドウに日本のジャージィーが飾ってありました」
ていねいに保存されたスクラップ帳を開いてくれた。ジャパンについて現地の新聞にこんな記述があった。
「どんな体勢からもダミーパスを駆使、右に左にパスを回し、クロスキック、フォローアップのトリックを熟知」
ちなみに記録にはFBが「寺村誠一(東京帝国大学OB)」とある。本職は毎日新聞(当時は大阪毎日新聞および東京日日新聞)のジャーナリストだ。「昼間プレーヤー、試合後は新聞記者に早変わり」(『東京大学ラグビー部百年史』)。自分の出場した試合の記事を書いて本国へ送った。たとえばこんなふうに(東京毎友会のサイトより)。
「在留邦人も肩身が広くなったとて、その喜びはこの上もない」「こちらが確実なタックルさえすれば、そう恐るべきものではないとの確信を得た」
クレジットには「ヴァンクーヴァー発」。今回の会場と同じ都市だ。