最長240日「代行体制」…安保リスク、8年前より増大=韓国
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する弾劾訴追案が国会で可決され、韓国は8年ぶりに再び首相の大統領権限代行体制を迎えることになった。大統領の固有権限である首脳外交と軍統帥権の空白を最小化することが柱だが、今回は状況がさらに悪化したという評価が出ている。内閣の相当数が「12・3戒厳」の同調者として捜査線上に上がったうえに、軍首脳部まで空白状態であるためだ。 15日、外交当局は「権限代行体制でも外交の空白はない」とし、各級で機敏に動いた。韓悳洙(ハン・ドクス)権限代行はこの日午前、バイデン米大統領と16分間電話会談し、「外交・安保政策を支障なく遂行する」と述べた。これを受け、バイデン大統領は「韓国国民に対する米国の徹底した意志を再確認した」と明らかにしたとホワイトハウスは明らかにした。趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官もこの日の記者会見で「首脳外交空白に対する懸念はバイデン大統領と韓権限代行間の電話会談で払拭された」と述べた。 しかし、憲法裁判所が弾劾審判と弾劾案を認容する場合、次期大統領選挙までの最長240日間、首脳外交が事実上不可能になるのは避けられなくなった。国家首脳が不在の中、トランプ政権2期目の発足、北朝鮮軍のロシア派兵、習近平中国国家主席の訪韓、韓日国交正常化60周年など主要懸案をきちんと扱うことは難しいという意味だ。 8年前の2016年12月、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾を経験した元高官たちは「結局、システムの問題」と口をそろえる。不利な局面だが、首相室-大統領室-外交部が円滑な協業システムを構築し、過渡期に隙間がないように組織を管理する必要があるということだ。 ただ、今は当時さらに不利な環境だという指摘が出ている。尹大統領の弾劾局面も、当時と同様にトランプ政権2期目の発足とかみ合うことになった。しかし変わったのは、米国新政権と全方位でネットワークを築くべき国務委員20人のうち過半数(11人)が「戒厳宣言国務会議」(今月3日)に参加し、捜査線上に上がった状況だという点だ。さらに、ある権限代行は内乱罪の容疑で告発された被疑者の身分だ。司法の領域は別だというが、これは米国をはじめとする海外主要国のカウンターパートと協議する際、信頼の問題につながりかねない。 また、トランプ政権2期目の政府は、1期目の時よりも大幅な不確実性を予告している。戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ韓国部長は12日、CSISオンライン対談で前日会ったというトランプ氏の元参謀を引用して「トランプ氏の初めての100日ではなく、初めての100時間に韓国に影響を及ぼし得る数多くのことが起きるだろう」と伝えた。トランプ政権が発足した直後から北朝鮮の核問題、防衛費分担金、関税および経済安保懸案などで米国の政策が急激に変わるはずだが、リーダーシップの空白で韓国がしっかりと対応できるかという懸念だ。 また8年前と違う点は、初めての軍首脳部の空白状態だ。戒厳を主導した金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官が自ら辞退した後、内乱などの疑いで拘束されたことに続き、陸軍参謀総長や防諜司令部・特戦司令部・首都防衛司令部・情報司令部司令官らが全員職務停止された。ある軍関係者は「いずれにせよ早く方向性が決定され、軍事態勢が正常化する必要がある」と話した。