世界が日本にドン引き「精神医療のおぞましい実態」…「精神科病院ベッド数は世界一、不必要な薬漬け治療」課題山積の現実
精神科病院を廃止したイタリアの精神医療改革の歴史を振り返った前編『「日本人が見過ごす「精神科の闇」…なぜイタリアは精神科病院を全廃できたのか?有名カリスマ精神科医が起こした「大革命」』に続き、イタリアなどの諸外国と比較しながら、世界に逆行する日本の精神医療の実状を紹介する。 【マンガ】「遺体がすごい形相で…」元火葬場職員が驚いた「ヤバすぎる事件」 (※以前は精神病院という名称が一般的だったが、2006年に行政上使用される用語として、「精神科病院」と改正されたため、表記は精神科病院に統一する。ただし大熊氏自身は、この呼び名の改革は精神科の醜い実態を隠す行為と考え、あえて精神病院という呼称を使い続けている)
単科精神病院を葬ったイタリアから学ぶべきこと
1978年イタリアでは、精神科病院を全廃し、地域の精神保健センターに全面転換を図る新しい精神保健法(180号法、別名バザーリア法)が制定された。 その後、約20年かけて精神科病院を完全に葬り、代わって地域精神保健サービス網を構築した。 「これが、今の日本が学ぶべき最重要ポイントです」と語るのは、イタリアの精神医療に詳しいジャーナリストの大熊一夫氏だ。 「イタリア全土は、現在163地区に区分けされており、各区に精神保健局が設置されています。精神科のベッドは、総合病院に最大15床以下の設置が認められ、2019年時点で285病院、合計3623床が稼働しており、3000以上の居住施設や準居住施設などには、30万人以上が生活しています。日本とは違い、入院する人はごく少数に限られ、地域の精神保健センターが管理する患者サポート体制が整っています」(以下の「」は大熊氏)
日本にはびこった政府指導の「収容ビジネス」
イタリア以外のほとんどの国でも、1960年代から精神科のベッド数は激減している。一方、日本の精神科病院ベッド数は、2022年10月1日時点で約32万床もあり、世界中の精神科病院ベッド数の5分の1以上を有している。 この日本は、1960年ころに厚生省によって大々的に奨励された「収容ビジネス」が確固たる地位を築き、自民党政権とも政治献金の固いきずなで結ばれ、今や厚労省も手を出せない勢力になってしまった。大熊氏も以下のように指摘する。 「約40年にわたり精神病院への入院を強いられたことは、国の不作為だとして、国に3300万円の賠償を求めて提訴した伊藤時男さんのケース(10月1日の東京地裁判決は原告の請求棄却。原告側は控訴の予定)も、精神科的な入院治療を必要とした期間は多く見積もっても数週間程度だったことが当時のカルテから判明しています。退院できずに亡くなる人も多く、基本的に収容が主だった機能になっています」