ユニチカ、繊維事業から撤退を発表 取引行、430億円債権放棄へ 社長ら来年4月退陣
ユニチカは28日、祖業の繊維事業から撤退すると発表した。衣料繊維、不織布、産業繊維の各事業を2025年8月までに売却する。三菱UFJ銀行などが約430億円の債権放棄に応じ、官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)が出資して筆頭株主となる。融資枠を含めた金融支援の総額は計870億円となり、構造改革を進め再建を図る。上埜修司社長ら全取締役は業績悪化の責任を取り、25年4月下旬をめどに退陣する方針。 ユニチカは全売上高の約4割を占める繊維事業が円安の影響もあって低迷し、25年3月期連結決算は2期連続の最終赤字を見込む。上埜氏は大阪市内で記者会見し、撤退理由について、19年ごろから原材料や燃料価格の高騰で事業環境が厳しくなり「幾度にわたる構造改革を行ってもなお抜本的な完遂に至らなかった」と釈明した。 取引行が債権放棄に合意後、臨時株主総会を経て25年4月下旬にREVICが約200億円で議決権付き優先株を取得し、現在の全取締役が辞任。REVICなどが新しい取締役を派遣する。 今後の成長事業としては、市場トップレベルのシェアを誇る食品包装用フィルムのほか、半導体関連の製品に力を入れることで収益性の改善を図る。 同社は1889年に尼崎紡績として創業。1918年以降は大日本紡績として日本の繊維産業を牽引(けんいん)した。近年は中国企業との競争が激化する中で業績が低迷。2014年に繊維製品を手がける子会社の佐賀工場閉鎖を決めるなど、国内での生産を減らし、海外に生産を移転することでコスト削減を図っていた。