湘南の18歳逸材・鈴木冬一が久保建英のいないU-20W杯代表の秘密兵器だ!
ベルマーレの指揮を執る前は長く育成に携わった曹監督が、思わず声を弾ませたのはリーグ戦で初先発させた3月17日のベガルタ仙台戦後。香川真司(ベシクタシュJK)や柿谷曜一朗(セレッソ大阪)のデビュー時に受けた記憶が、鈴木のパフォーマンスを介して蘇ったと言葉を紡いだ。 「ちょっとタイプは違うけど、ボールをもったときにしっかり顔を上げて、相手が近寄って来られない間を作れる。そこがアイツの一番いいところだし、だからこそデビューから短期間であそこまで堂々としてプレーを見せられる。個人としての絶対的な武器をもっている選手は、これからも生き残っていけると思う」 2度目の衝撃はプロ初ゴールが決まるまでの過程から伝わってきた。直近のリーグ戦となった4日の名古屋グランパス戦で、ほぼ同じシチュエーションを迎えた鈴木は思わず力みすぎたのか、左足によるシュートを枠の外に大きく外していた。 「同じミスを繰り返さない、というところもいいところだと思う」 鈴木の千金の一発を守り切り、グループリーグ敗退の危機から脱した試合後の公式会見。曹監督はわずか4日後に遭遇した同じシーンで、嫌な記憶を断ち切ったルーキーの胆力に表情を崩した。 「ピッチのなかにおける自己解決能力が非常に高い。もって生まれたものもあるだろうし、親御さん以下、彼の周りにいた方々の教育もあるだろうけど、能力の高さには本当に驚かされるばかりというか、指導者として僕自身も学ばせてもらっている気がする」 男手ひとつで鈴木を育ててきた、父親の啓司さんに教育方針を聞いたことがある。ちなみに啓司さんはサッカーとウインタースポーツ出身で、特に後者に傾倒していたことで「やるのならば一番になってほしい」という思いを込めて冬一(といち)と名づけた。 「人生の分岐点に直面したときは、小さなころからすべてアイツ自身に決めさせてきました」 たとえば大阪・興国高の3年生へ進級する直前の昨年3月。鈴木は自らの強い意志で転校を決意し、8年間にわたって心技体を磨いてきたセレッソ大阪のアカデミーも卒団した。2017シーズンにJ3で3試合に出場しているのは、2種登録選手としてセレッソ大阪U-23でプレーしていたからだ。 「セレッソには小学生のときからお世話になったので、悩みに悩み抜きました。ただ、もう一度大きく成長したい、という思いが引き金になりました。長崎へ行ったことを遠回りだと思う人もいるかもしれないけど、自分はむしろ近道だったと思っています」