パーパスへの共感をひきだすポイント
人々の共感はどこから生まれるのか
「インサイド・ヘッド2」の話に戻りましょう。エンドソングの感動を振り返ったときに、半ば興奮気味に「インサイド・ヘッド2」を、次のように整理していきました。 ・作品テーマ(伝えたいこと):自分自身を受け入れること ・作品:インサイド・ヘッド2 ・テーマを伝えるエンドソング:SEKAI NO OWARIの楽曲「プレゼント」 私が「インサイド・ヘッド2」に感動した理由は、作品を理解し、自分の経験を振り返ったからです。そして、エンドソングに感動した理由は、作品やテーマとつながっていたからです。つまり作品を理解したからこそ、エンドソングからより大きな感動が生まれました。 これと同じことが、企業やブランドのパーパス伝達施策にも当てはまりませんか。つまり、施策失敗の理由は、商品に対する人々の理解不足にあると考えられます。あまりよくわからない商品に対しては、共感しようがないですよね。 人々が商品の提供価値を認識して、その価値と企業やブランドのパーパスがつながったときにはじめて“本質的な共感”が生まれるわけです。私があえて“本質的な共感”と表現したのには理由があります。施策への共感と、企業やブランドへの共感は別物だからです。 楽曲「プレゼント」をBGMに「インサイド・ヘッド2」のダイジェスト映像を流した場合、映画を観ていない人は、「楽曲は感動するけど、この映像はなんだろう?」と疑問が湧くのではないでしょうか。それと同じことです。 楽曲が伝達施策で、映画が企業やブランドにつながる商品だと考えてみてください。施策のすばらしさは伝わるものの、映画のテーマやすばらしさが伝わらない状況だといえます。企業やブランドにつながらないパーパス伝達施策は意味がありません。戦術は成功したが戦略は失敗といわざるを得ません。
パーパスの伝達施策は、土壌づくりと一貫性が成功のポイント!
このように論を展開すると、「パーパス伝達施策に意味はあるのか」と疑問が湧くかもしれません。その通りです。パーパスという言葉に注目が集まっているからといって、すべての企業やブランドがパーパス伝達に注力するべきでしょうか。まずは「受け入れてもらえる土壌づくり」が大事です。順序を忘れてはいけません。 また信用は言葉ではなく、行動を積み重ねて得るものです。動画や音楽などの制作物だけで伝えるのではなく、事業や取り組みという形で人々の目に触れなければ、本当の意味で共感してもらえません。 つまりパーパス伝達施策において、その施策単体だけでは新規顧客が増えないと私は考えます。企業やブランドの理解者に、「一貫性のある行動に基づく信用」を得てはじめて機能するからです。社内の場合は商品への理解が深いためパーパスが伝わりやすいですが、人々への伝達は一朝一夕では実現しません。パーパス伝達施策はそれほど難しいといえるでしょう。 全体を通して私が伝えたいことは、会社やブランドに対する人々の理解を見誤らずに最適なマーケティングを実行する重要性です。施策を検討する際には、本当に今は何をやるべきなのか、立ち止まって優先順位を考えることをお勧めします。
おわりに
今回は「インサイド・ヘッド2」での感動体験をもとに、やや無理やりかもしれませんがパーパスの伝達について述べました。おやすみしていた期間に得た知識や経験などを踏まえながら、今後も定期的に私の“頭の中”を共有していきます。次回もお楽しみに。