パーパスへの共感をひきだすポイント
「パーパスの伝達」は、なんのために行うのか
皆さんはパーパスという言葉を聞いたことがありますか。ESG(Environment、Social、Governance)経営、SDGs(Sustainable Development Goals)といったワードとともに注目され、会社やブランドのパーパスを意識した活動がここ数年で増えています。そもそも、なぜパーパスを掲げるのか。それには2つ理由があります。 1つは「社内メンバーが同じ方向を目指して動くため」です。サービスである商品を作って世に送り出すまでには、さまざまな部署が関わります。しかし、目指す方向がなく漫然と働くままでは、自分の仕事に情熱や誇りをもてません。「この商品を通じて、〇〇に貢献、実現する」というパーパスがあれば、社員は業務目的をブレイクダウンして考えられます。これにより社員どうしが同じ方向を向きながら協力し、商品開発や改良に注力できます。 もう1つは「環境に合わせて変化する際の軸」になるからです。パーパスはよく“北極星”に例えられます。政治・経済・社会・技術などの外部環境で変化する人々の価値基準にあわせて、会社やブランドは商品の価値を提供します。適応できない場合は人々が離れていき、事業が継続しない恐れがあります。 しかし“適応”は、すべてを変えるわけではありません。パーパスは変えずに、誰に何をどう伝えるかというマーケティングを変えるわけです。パーパスがなければ、ブランドの過去や未来に目を向けていない一時点の最適解で動いてしまい、これまで築いたブランド資産を壊して人々が離れる可能性があります。極端な例をあげると、先祖代々継ぎ足してきた“うなぎのたれ”に、激辛ブームだからという理由でハバネロソースを入れるようなものです。 2つの理由を総括すると、パーパスは組織運営の要素が大部分を占めるといえるでしょう。それなのになぜ企業やブランドは、パーパスをわざわざ人々に伝えたいのでしょうか。主な理由はパーパスに「共感」してもらうことで企業やブランドに興味をもってもらい、商品購入につなげたいからです(わかりやすくするために、ここでは主な理由だけあげています)。 しかし、周囲の話を聞くと「なかなか共感されないんだよね」と、うまくいかないケースを耳にします。なぜ素敵なパーパスを伝えているにもかかわらず共感されないのか。その答えは、先述した「受け入れる土壌づくり」と「一貫性」にあります。