マッサ、”疑惑の2008年”めぐりついに訴訟へ。120億円の補償と「本来ならマッサがチャンピオン」宣言を要求
■FIAの責任を追求するマッサ
金銭的な補償を求めるだけでなく、マッサはFIAに対し、シンガポールGPのクラッシュの状況を調査しなかったのはFIAの規定に違反する行為だったと認め、もしFIAが規定違反を犯していなければシンガポールGPの結果は取り消すか調整されていたはずであり、マッサがチャンピオンになっていたはずだという宣言をすることを求めている。 マッサの行動は、ルノーの陰謀についてFIAとF1首脳陣が正しく調査・対処していなかったという、彼と彼の弁護士たちの信念に基づくものだ。 エクレストンと当時のFIA会長であるマックス・モズレーは、ピケJr.の行動をその年の最終戦ブラジルGPの前に知っていたことが明らかになっており、すぐに対応すべきだったという主張だ。 裁判書類では、FIAには不正行為の疑惑を調査する契約上の義務があったと主張。規約ではFIAがその権限を『公正かつ公平な方法で』行使するために作られたものであり、『競技会や競技者の参加を妨げたり、妨害したりするような形で施行されることはない』とされている。 さらに複数の条文を引用し、FIAが規約に書かれていることに従っていれば、ピケJr.が故意にクラッシュしたことを認識した時点で、それを調査するためにスチュワードを招集する義務があったとマッサ側は主張している。 マッサは、クラッシュゲート事件がF1にダメージを与えるスキャンダルになるのを防ごうとしたF1とFIAの陰謀の犠牲者になったと指摘。きちんと調査を行なうべきだったし、必要であればFIA授賞式も延期すべきだったと主張している。 この問題は今後、裁判官の判断に委ねられることになるが、奇妙なことに当事者のエクレストン自身もマッサの法的な行動を支持しているようだ。 PA通信によると、エクレストンは次のように語ったという。 「もしマッサが私に尋ねてきたなら、私は訴訟を起こすのは完全に正しいことであり、何が正しくて何が間違っているかはイギリスの裁判官に判断してもらうべきだと言っただろう」 「結果がどうなるかについては何も言えない。彼の立場からすれば、英国の裁判官が評決を下す方がいい。その方が彼にとって助けになる」 今回の裁判の結果に関わらず、ハミルトンが2008年にマクラーレンで初のタイトルを獲得し、マッサは1ポイント差で敗れたというF1の歴史は変わらないだろう。この裁判が、F1がより良いスポーツとなるために役立つことを願うばかりだ。
Jonathan Noble