マッサ、”疑惑の2008年”めぐりついに訴訟へ。120億円の補償と「本来ならマッサがチャンピオン」宣言を要求
元F1ドライバーのフェリペ・マッサが、2008年シンガポールGPの”クラッシュゲート”事件に対するF1とFIAの対応と、その影響について法的措置を検討していることを明かしてから約11ヵ月。ついに行動を起こした。 【ハイライト動画】F1 2024第2戦サウジアラビアGP決勝 マッサは、FIAとフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)、そしてバーニー・エクレストンを相手取り、ロンドン高等裁判所に提訴したのだ。 これは当時F1の最高責任者であったエクレストンが、フェルナンド・アロンソを勝たせるためにルノーがネルソン・ピケJr.に故意のクラッシュを命じたクラッシュゲート事件を早くから認識していたと暴露したことを発端としている。 ルノーの不正を知ったエクレストンやFIAが適切な調査を行ない、適切な措置を取っていれば、シンガポールGPの結果が無効とされ、ルイス・ハミルトン(当時マクラーレン)ではなく自分がチャンピオンに輝いていたとマッサは考えている。 この件をめぐる論点は以前から議論されてきたが、訴訟に至る過程でより具体的な内容が明らかになった。マッサの弁護団が高等裁判所に提出した書類から、現在行なわれている法的議論と、マッサ側がどのような結果を求めているのかについて見えてきたのだ。
■マッサの要求は?
マッサが2008年の出来事について法的措置を検討しているという話が昨年初めて報じられた時、その焦点はチャンピオンシップの結果を覆すことにあった。 ブラジルでマッサの代理人を務めるサンパウロ・ヴィエイラ・レゼンデ・アドヴォガドス法律事務所のベルナルド・ヴィアナは昨年9月、motorsport.comに「目的はトロフィーを持ち帰ることだ。お金じゃない」と語っている。 しかしながらFIAの規約では、シーズン終了後のFIA授賞式でトロフィーが授与された後にそれを覆す手段がなく、当時はどうやってその手段を模索するのか不透明だった。 そしてマッサの弁護団は、タイトル奪還を求めるのを諦めた。というのも、裁判書類ではハミルトンのタイトルを剥奪し、マッサに授与することを求めるような記述は一切ない。その代わり、裁判の争点はFIAとF1の誤った行動によってマッサが被った損害についてとなるようだ。 マッサはチャンピオンになれなかったことで200万ユーロ(当時約2億5000万円)のボーナスを失っただけでなく、ドライバーとしてあるいはF1やモータースポーツに関連する他の役割において年俸が引き下げられたこと、スポンサーや商業的な機会を失ったことで損害を被ったとしている。 裁判書類では、正確な最終的な金額は”専門家の証拠”によって決定されるとしながらも、利息を支払う前の損失額については6400万ポンド(約120億8000万円)が最良の見積もりであると述べている。