【ラノベ最新動向】氷室冴子『銀の海 金の大地』シリーズ復刊へ! 『転スラ』最新巻はアニメと違った読み味に
2025年1月のライトノベル新刊では、大森藤ノ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア15』(GA文庫)に向かう関心が凄まじそう。本編の『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか20』(GA文庫)のエピロールで示されたとてつもない出来事。それがどのようにして起こったかが、アイズ・ヴァレンシュタインと【ロキ・ファミリア】をメインに描く『ソード・オラトリア』シリーズの最新刊で分かると見られるからだ。「ダンまち」ファンにとって、1月15日の発売日前後はドキドキが止まらないだろう。 【写真】ラノベはどうやって世界に広がった? 渋谷TSUTAYA「ライトノベル展2024」の様子 シリーズものでは、瘤久保慎司の『錆喰いビスコ』シリーズが1月10日発売の『錆喰いビスコ10 約束』(電撃文庫)で完結。滅びかけた日本列島に生えまくっている巨大なキノコを狩りつつ戦ってきたビスコと、相棒のミロのストーリーで、最新巻では邪智暴虐の王・ンナバドゥの策略でビスコやミロに危機が迫る。待望のTVアニメ第2期も決まって独特の世界観に改めて注目が集まる中、一足先に完結する物語の行く末を見極めたい。 まったく先が読めないシリーズの最新刊が、犬村小六『白き帝国3 アルテミシア純情』(ガガガ文庫)だ。猫耳を持ったミーニャ族の国が謀略によって滅亡寸前に追い込まれ、王子や仲間がどうにか逃げ出したものの敵の圧力は強まるばかり。知恵を絞り行動も起こして再起を狙うミーニャ族に今度は何が起こるのか。アルテミシアという少女におよそ似合わない「純情」という言葉が添えられたサブタイトルは何を意味しているのか。一刻も早く中身を知りたい新刊だ。1月20日発売。 人気シリーズでは、伏瀬による『転生したらスライムだった件 22』(GCノベルズ)が1月30日に発売。主人公のリムルが不在となっている状況で、テンペストが相手をしている天使軍も瓦解しはじめていたが、フェルドウェイやヴェルザードといった存在が脅威として残っている上に、最悪の獣こと"滅界竜"イヴァラージェが動き出す。ほのぼのとしたところがあるTVアニメとは違ってシリアスな展開が続く原作だが、過去にないスリリングな状況がどこに向かうのかを確かめよう。 新作で注目は夜迎樹『なぜ逃げるんだい? 僕の召喚獣は可愛いよ』(ファンタジア文庫)。魔獣を召喚する術を学ぶ学園に地方の村から優秀さを認められ、入学してきたヘレシー。周りは貴族ばかりで同級生のレティーシアと話しているだけでジェイドから因縁をつけられ、召喚獣で対決することになる。そこでヘレシーが喚び出した召喚獣がとてつもない姿で、ジェイドは恐怖に沈みレティーシアも夜寝られなくなってヘレシーの部屋に押しかけ、枕や布団を奪っていく。心は乙女で姿は異形の召喚獣や、上半身は美少女で下半身は触手の召喚獣を笑顔で操るヘレシーは何者か? 1月18日発売。 『ウィザーズ・ブレイン』シリーズを完結させた三枝零一による新シリーズ『魔剣少女の星探し 十七【セプテンデキム】』(電撃文庫)は、魔剣をふるってのバトルを楽しめるファンタジー。魔剣の使い手たちが争った戦争が終わって1年が経ち、最強の魔剣使いを目指して都市セントラルを訪れたリットはそこで、《はぐれの魔剣》を巡る陰謀に巻き込まれ、魔剣の使い手クララと決闘をする羽目となる。2人の魔剣少女たちの行く末を見ていくことになりそうなシリーズだ。1月10日発売。 GA文庫大賞で初めて金賞と審査員特別賞をW受賞した結城弘『イマリさんは旅上戸』(GA文庫)。バリバリのキャリア女性で美人の今里マイは会社では冷徹な上司だが、酒に酔うと突発的に旅にでる”旅上戸”。その酒癖に付き合わされて連れ戻しに行く役を与えられた”俺”と、旅先での酔ったマイさんとの関係がだんだんと深まっていく。美人上司とのイチャイチャに旅行も絡んだ異色のラブコメディになっていそう。1月15日発売。 第11回オーバーラップ文庫大賞・金賞受賞作の澤松那函『フェアリーメイド 1.傷だらけの妖精職人と壊れかけの人工妖精』(オーバーラップ文庫)は、人に奉仕する擬似生命の人工妖精(フェアリーメイド)が普及した社会で、時に暴走して人を害する人工妖精を壊す仕事をしている青年と、相棒の人工妖精が社会を揺るがす難事件に挑む。人間とアンドロイドがバディを組んで事件に挑む菊石ほまれ『ユア・フォルマ』シリーズと重なる読み味を期待できそうだ。 『マスカレード・コンフィデンス』の滝浪酒利による『時間を止めてデレまくる、最強無敵の黒乃さん』(MF文庫J)はSF設定のラブコメ。時間を停止させる能力を持った異能エージェントで超絶美少女高校生の黒乃詩亜には、時間を止めて片思いの男子にデレまくる秘密があった。絶対に気付かれないと思っての行為だったが、実は意中の男子は停止中のできごとをすべて認識していた。バレたら赤面では済まないシチュエーションだけに、どのようなやりとりが繰り広げられるかに興味津々だ。 『なんて素敵にジャパネスク』や『海がきこえる』など少女小説や青春小説の傑作を幾つも残して2008年に亡くなった氷室冴子の代表的ファンタジーシリーズ『銀の海 金の大地』が集英社オレンジ文庫から復刊。古代の日本を舞台に、14歳の少女・真秀が繰り広げる壮大な冒険の旅が描かれる。イラストにコバルト文庫版と同じ飯田晴子が起用されており、旧来のファンも新しく触れるファンタジー好きも共に楽しめそう。1月20日第1巻『銀の海 金の大地 1』(集英社オレンジ文庫)が発売で、以後毎月1冊刊行される。 三上延、似鳥航一、紅玉いづき、近江泉美、杉井光、浅葉なつと豪華なメンバーが揃ったアンソロジー『神様の本』(メディアワークス文庫)が1月24日に登場。「神×本」というテーマでそれぞれ作品を寄せている。三上は『ビブリア古書堂の事件手帖』の栞子が、現存する最古の日本語訳聖書を追ってその謎を紐解く話で、浅葉は『神様の御用人』に登場の緒良彦が神と共に光源氏の最期を記したといわれる『源氏物語』幻の帖「雲隠」を求めて奔走する話。作家や作品のファンなら読んで損のない1冊だ。
タニグチリウイチ