「胸が苦しい」は嘘じゃない! 失恋は本当に身体的な痛みを伴う
失恋が体に与える影響は他にもある?
痛ましい失恋直後の体内では、さまざまな生理学的プロセスが展開される。まず、失恋した瞬間に副腎からコルチゾールとアドレナリンが勢いよく分泌されて、血圧の上昇や動悸、口の渇きを引き起こす。 2人が付き合っていた頃の写真を見ると泣きたくなるのに、なぜか目をそらせないのは、血液が脳の快楽中枢に流れ込むから。 血液は、痛みを引き起こす脳の2つの領域にも送られる。このような非常事態に左前頭前野が混乱し、活発化するわけだけれど、この左前頭前野は物事を再評価するという大事な機能を持っていて、私たちに「別れてよかったのかもしれないよ」と言ってくる。 その頃には神経系もストレスで参ってしまい、消化が滞るため、あなたは食欲を感じなくなる。そして、ストレスホルモンのコルチゾールは肌に余分な皮脂を蓄積させる。
心臓では何が起こる?
失恋は英語でブロークンハート(壊れた心臓)と言うけれど、実際に失恋で心臓が壊れることはあるのだろうか。“たこつぼ心筋症”は失恋によって引き起こされる心臓発作で、“ブロークンハート症候群”とも呼ばれている。 「“通常”の心臓発作は、心筋に血液を供給する冠状動脈が閉塞することによって生じます」と説明するのは、ブロークンハート症候群の研究を何十年も率いてきたアレクサンダー・リヨン博士。 「それに対して、たこつぼ心筋症は、アドレナリンの分子センサーがもっとも集中している心筋の下部を麻痺させます」 ブロークンハート症候群は、胸部の痛みと息切れを引き起こす。それが心臓発作につながることもあるので、稀とはいえ命取りになりかねない。この症候群が初めて報告されたのは1990年。そして、近年の研究により、その原因と仕組みが明らかになってきた。 一例として、2021年3月の欧州心臓病学会誌に掲載された論文は、脳の扁桃体(感情調節に関わる領域)にある神経細胞が活発になると、ブロークンハート症候群の発症が早まるとしている。 でも、あまり心配しないで。たこつぼ心筋症(TSS)が男性より女性に多いのは確かだけれど、心臓発作を経験するのは患者の3%未満と言われている。
ブロークンハート症候群から立ち直ることは可能?
「辛い経験は人を強くする(What doesn’t kill you makes you stronger)」というニーチェの言葉は、失恋にも当てはまる。 「通常の心臓発作では、心臓の組織に物理的な傷跡が残ります」とリヨン博士。「でも、たこつぼ心筋症では残りません。心臓(下部)が麻痺するのは、心臓という人体で最も重要な臓器を毒性量のアドレナリンが引き起こすダメージから守るためです」 そして、心臓にもマッスルメモリーがあるので、2回目は1回目より立ち直りが早くなるはず。 ※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。