悩む管理職に伝授「部下を思い通りに動かす」コツ 「ナッジ理論」を活用して自発的に気づかせる
どちらのファンも、応援する選手のゴミ箱に吸い殻を入れていくので、たばこのポイ捨てが減りました。ゴミ箱への「投票」が、環境改善につながったのです。 サッカーファンの行動を行動経済学の視点で分析し、思考のクセ(自分が応援する選手が世界一と思っている)から、「投票」というちょっとしたきっかけを与えることで、行動を変えた(ポイ捨て→ゴミ箱に入れる)のです。 この投票は、街の環境が改善される社会的に望ましい行動です。ナッジ理論は、その人の利益になることや社会的に望ましい行動へ変容させることが、基本的な考え方です。
逆に、実は本人の利益にならないことや、望ましくない行動への変容を促すもの(不必要なものを購入してしまう)は、ナッジではなく、スラッジ(sludge:下水の悪臭)と言います。ナッジ理論を活用する際には、その人にとってよりよい選択をしてもらうためにあるのだということに留意しましょう。 ここまで、ナッジ理論について説明をしてきましたが、ナッジを実際に活用するのは難しいと感じる人もいるでしょう。 ナッジを活用するためのポイントを、英国のBIT(英国政府内の省庁と連携している専門チーム)が、「EAST」というフレームを提唱しています(図表1)。
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください また、この「EAST」で、よりよい方向へ行動変容を促す具体的な手法として、「FIND CAMPS」があります(図表2)。実際に、仕事をするうえでナッジを活用しやすいシーンとしては、部下の育成などの人材マネジメントが挙げられます。 たとえば、図表2の行動変容ツールの1つに「フィードバック」があります。
■フィードバックは適切なタイミングで まず、フィードバックのタイミングです。フィードバックは、可能な限りスピーディーに行なうことが必要です。 たとえば、仕事でミスをしてしまったとき、すぐに上司に叱られたり、指摘を受けたりすると、以後は二度とミスをしないよう心がけるでしょう。 しかし、そのミスを指摘されず、トラブルにもならないまま、しばらくして、「そういえば……」と、上司に言われても、正直「えっ、いまさら言われても」と感じてしまい、反省や改善の意識は生じにくくなります。