ランボルギーニ・ウラカンLP580-2とLP610-4 4WDオープンかそれとも2WDか? 毎日乗れる猛牛はどっちだ?【エンジンアーカイブ蔵出しシリーズ】
ランボルギーニの魅力はどこにある?
ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、ランボルギーニの同門対決。お送りするのは、ランボルギーニのエブリデイ・スポーツカー、ウラカンの2輪駆動モデルのLP580-2と屋根開きモデルのLP610-4スパイダーが相次いで上陸したのを機に2台同時に引っ張り出して比較試乗した2016年10月号のリポートだ。はたして、毎日乗るならどっちだ? 【写真17枚】2016年モデルのランボルギーニ・ウラカンLP580-2とLP610-4は、どんなスーパーカーだったのか? 詳細画像でチェック ◆スーパーカーの概念が変わるきっかけになったガヤルド 村上 かつてスーパーカーと言えば、もの凄い苦痛を強いるモノだった。僕は昔のランボルギーニには乗ったことはないけれど、本誌前編集長のスズキさんなんか、はじめてカウンタックに乗ったときは、あまりにクラッチが重くてまったく動かないんで、張り付いちゃって壊れてると思ったっていうんだからね。 塩澤 そういえば、創刊の頃編集部にあった996型のポルシェ911GT3だって、クラッチが重くって大変だった。長い坂道を渋滞してるときに走るのはホントに苦痛。岩を踏んでるみたいで、プルプル脚が震えっぱなしだったからなぁ。 村上 そう、あの頃はいまみたいにスーパーカーがこんなに乗りやすいクルマになるなんて、考えてもみなかった。ランボルギーニがアウディ傘下になって、2003年にガヤルドを出したときは、ホントに乗りやすくてビックリしたからね。 塩澤 スーパーカーの概念が変わるきっかけになったのは、間違いなくガヤルドだと思うよ。同じ時代でも、12気筒のムルシエラーゴは旧態依然としたクルマだったから、ガヤルドとムルシエラーゴの間に進化の突然変異が起こって、そのガヤルドに影響されてライバル・メーカーも変わって行ったんだからね。いまやスーパーカー=苦痛が伴うもの、っていう式は、完全に成立しなくなった。 村上 その通り。そして12気筒でさえもムルシエラーゴからアヴェンタドールになって、えっ、こんなに乗りやすくなったの、ってビックリした。電子制御もたくさん入ってるし、スーパーカーというよりハイパー・スポーツカーだなって思った。それが、ウラカンが出て、もう腰が抜けるほど驚いたね。こんなに乗りやすくなって、しかも速い、その上カッコいい。スペインのアスカリ・サーキットで乗ったときは、これはもう決定版だなって、開いた口が塞がらないほどビックリした。 ◆毎日スーパーカー 塩澤 そんなウラカンの2輪駆動モデルのLP580-2と4駆の屋根開きモデルのLP610-4スパイダーに今回乗ってみたわけだけど、これまでは毎日スポーツカーの代名詞、絶対王者と言えばポルシェ911だったのが、もはや独壇場ではなくなった、と思ったね。 村上 この2台のウラカンの場合は毎日スポーツカーではなくて、毎日スーパーカーなんだけど、その領域は益々広がっている。そしてもうひとつ、今回の特集では別のページでアウディのR8にも乗ったんだけど、R8とウラカンが、プラットフォームもV10エンジンも共有していながら、こんなにも味付けの違うクルマに仕上がっていたことにも驚いた。 塩澤 その話、面白いじゃん。どんなふうに違うの? 村上 ひと言でいえば、ウラカンはスーパーカーの毎日版で、一方のR8はスーパー・スポーツカーの毎日版なんだと思う。R8と較べてよくわかったのは、ウラカンがスーパーカーの味をすごく色濃く残していること。そういうクルマに毎日乗れるというのは、やっぱり特別な喜びだと思うし、しかも屋根開きでオープンエアが楽しめるとか、後輪駆動ならではの走りが楽しめるわけでしょ。これはもう、たまらないよ。 塩澤 毎日スーパーカーのすそ野の広がりがわかるデーターがここにある。ガヤルドは発売後の19カ月間で世界で2100台を売り上げたんだけど、ウラカンは3550台だったっていうからね。ガヤルドの成功の上に成り立っている数字とはいえ、これはもう苦痛を我慢して乗るスーパーカーではない、というのが定着したことを証明している。 村上 それにしても、今回乗ってみてスパイダーはすごくお得なクルマだと思ったな。クーペで楽しめることは全部できて、その上、屋根が開くという特典が加わった。普通、屋根が開くと剛性が落ちたり、対候性が問題になるとか、マイナス要素を考えるんだけど、このスパイダーに関しては、プラスはあってもマイナスがあるとは思えないからね。 塩澤 剛性に関していえば、厳密にいったらきっと落ちてると思うけど、まったくわからなかったね。 村上 サーキットを頻繁に走る人はクーペを選んだほうがいい。だけど普通の人が一般道を走る限りは、どんな山道を飛ばしても、剛性の違いはまったくわからないだろうね。 塩澤 スパイダーで一番驚いたのは、乗り心地がいいことだね。スパイダーのほうは610馬力もあるから、相当ハードなんだろうな、と覚悟してたけど、2駆と較べて全然しっとりしていてうっとりしたよ。 村上 正直いって、今回の2駆と4駆を較べてみると、4駆のほうがウラカンの本筋であることがよくわかったね。2駆はあくまでも派生モデルで、本筋とは違う味付けを提供しようという意図がはっきりあると思う。味付けの違いをもう少し具体的にいうと、2駆のほうがやんちゃな感じがする。でも、実は2駆のほうがバネが柔らかくなっていて、ロールもするっていうのは驚いたね。 塩澤 アシを柔らかくすることで、荷重移動を感じやすく、運転のリズムをつくりやすくしようという狙いがあってのことで、ランボルギーニはサーキットでも楽しめるようにしたって言ってる。4駆はもちろんサーキットでも速いんだけど、終始アンダーステア気味で安定してる。一方、2駆はフロントの舵の効きを良くして、後輪を積極的に滑らせるようなオーバーステア気味の味付けになってるはずなんだけどね。 村上 でも、このモデルはサーキットを走り込んでタイムを刻むようなクルマではないよね。おそらくこうした味付けを好むある種のドライバーに向けてつくられていると思う。今回の個体で乗り較べた感じでいうと、2駆のほうのアシのセッティングはいま一歩詰め切れてないような気がしたな。実は今回の試乗は2駆のほうから乗り始めて、いやぁ、軽やかでいい感じだなぁ、乗り心地もいいなぁ、って思ってたんだけど、その後で4駆に乗り換えると完成度の高さが全然違って驚いた。2駆は意外に雑だったんだ、って思った。でも僕が雑といってるところのニュアンスが、4駆の重厚さとは違う、軽さとかカジュアルさを味付けとして出そうとしたものかもしれない。 塩澤 ポルシェは911の2駆と4駆の味の違いをなくそうと努力して、やっと克服しつつあるわけだけど、ウラカンはあえてその違いを明確にして、お好きなほうをどうぞ、っていってるような気がするね。 村上 まあ、コーナーの立ち上がりなんか全然違ったよね。4駆のほうは前輪がグイグイ引っ張る感じでむちゃくちゃ速かったけど、2駆は後から蹴り上げるような走り方。たぶんサーキットを走っても4駆のほうが断然速いと思うよ。そもそもパワーも30馬力も違うしね。 塩澤 あと、エブリデイ・スーパーカーになったなぁ、と思ったポイントはブレーキだね。ホントに驚くほど扱いやすくなったもの。ガヤルドにはじめてカーボンセラミック・ブレーキが付いたときなんて、街乗り程度の速度だとかっくんブレーキでまともに走れなかったからね。610-4はカーボンセラミックで、580-2はスチールだけど、どっちも素晴らしかった。 村上 リニアでスムーズ。ホントに細かいところまで踏み分けられる。それとエンジンもガヤルドとくらべるとどんどん良くなってる。よく考えてみるとね、いまV10の、しかも自然吸気エンジンを味わえるのって、R8とウラカンしかないわけだからね。これはすごいことだよ。 塩澤 エンジンだけは、毎日F1カーみたいなもんだからね、ひと昔前の。たまらないよ、ホント。でも、2駆も4駆もそうだけど、街中を低速で普通に走っているときは、まるで子牛ちゃんみたいに扱いやすい。それがひとたびアクセレレーターを踏み込むと猛牛に変身する。 村上 日本で乗るとちょっと幅が広くて、ちょっと車高が低いから気を使うけど、それを抜きにすれば素晴らしく乗りやすいことは間違いない。 毎日乗れるか? 塩澤 ひと昔前はランボルギーニといえば、ちょっとやそっとでは近寄れない恐れおおいクルマだったけど、ウラカンになって、ものすごくフレンドリーになった。 村上 値段が高いこと以外はね。 塩澤 ん~、確かにそこはまだフレンドリーではないな。 村上 もうちょっと安いと僕も買いたいんだけどなぁ。僕はやっぱり屋根開きがいいな。 塩澤 2駆の値段も魅力だけどね。 村上 2駆はいくらなの? 塩澤 2462万4000円。 村上 スパイダーは3267万円だから、その差約800万円! もう1台、毎日スポーツカーが買える。4駆で屋根開きっていうのは、相当贅沢というわけだね。 塩澤 あと2駆と4駆の違いはフロントとリアのデザインが少し変わったことだね。 村上 最初にウラカンを見たときは、ものすごくカッコよくて、もうやることがないと思えるくらい完成されたデザインだったけど、まだ手があったとは驚きだよ。 塩澤 フロントのエアインテークの形状が変わったんだけど、これはデザイン性もあるけど、ちゃんと空力とブレーキ冷却に関係してる。 村上 4駆のほうしか知らなければこれでいいけど、2駆を見ちゃうとやっぱりカッコいい。 塩澤 コレ、毎日乗れるかな? 村上 あのね、いかに乗りやすくなったからって、スーパーカーに乗るのは大変なことなんだよ。 塩澤 でも、ハードルが下がったことは間違いないよね。 村上 そうだけど、人にジロジロ見られるでしょ。それだけでも大変なことだし、迂闊な格好では乗れないわけだよ。まあ、ポルシェほど気楽ではない。実際、オオオって見られる。それが魅力でもある。 塩澤 スーパーカーのスーパーカーたる所以のひとつは間違いなくそこにある。それこそランボルギーニというブランドの魅力だよね。 村上 それはそうでしょ、だってスーパーカーっていうのは、ホントはランボルギーニのことをいったわけだからね。もっと言えばカウンタックのことだったんだよ。その末裔のウラカンが、こんなに乗りやすいクルマになったのは、革命だよ。スーパーカー革命! 話す人=村上 政(ENGINE編集長)+塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬 (ENGINE2016年10月号)
ENGINE編集部
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