こじれた親子関係。わが子から完全無視、仕事や生き方さえも否定される母親。【NHK大河『光る君へ』#39】
大人になった賢子が、嘆き悲しむまひろに寄り添うシーンも
本放送にも賢子がまひろに反抗的な態度をとるシーンがいくつかありました。屋敷に帰ってきた賢子は為時や惟規には挨拶をするものの、まひろを完全無視…...。(反抗期の娘がいる親御さんにとって馴染みのシーンですよね) また、裳着の日も、まひろは賢子からその場にいないかのような扱いをされます。 「今日までお育てくださってありがとうございました。おじじ様のご恩は 忘れませぬ」と、ここにおいてもまひろはスルーです。さらには、宮仕えの話になると「母上と同じ道を 行きたくはございませぬ」と、まひろは生き方を完全否定されます。 為時や惟規がまひろと賢子を時々重ねて見ているように、まひろと賢子は“似た者同士”です。 親と子が理解し合うことは漢文を理解するよりも難しいのかもしれません。まひろも為時に似て学問を愛し、内向的で、それでいて曲がったことを嫌っていましたが、自分と似ているはずの父を理解できるようになるまで時間がかかりました。賢子についても母譲りのまっすぐな性格であるがゆえに家族から離れて暮らす母親を理解できず、複雑な思いを抱えています。 他人であれば気にならない言動でも親子であれば気になることもあります。それは相手を愛し、血のつながりを意識しているがゆえに、自分の"思い"や"理想"を押しつけてしまうからなのかもしれません。 本放送のラストでは、まひろと賢子の関係に少し変化が生まれます。 賢子は涙を流すまひろの背中を優しくたたき、母親と悲しみを分かち合うかのように抱きしめます。 惟規が「親子って変わらないようで 変わるんだよな…。」と口にしていたように、親子の変化は時の流れの中で変化します。まひろは為時の家での言動に疑問を抱き、母の死の真相を葬ったことをうらんでいた時期もあります。しかし、こうした時期は過ぎ去り、まひろは父と和解し、一家を支える立場になりました。賢子についても、涙を流すまひろを抱きしめる彼女の表情はやさしく、たくましく、母親を支える日が訪れるだろうことも予感させるものでした。 つづきの【後編】記事では、平安時代の不倫の代償についてお届けします。 「不倫」をしたら懲役2年ってホント!? 百人一首の女たちの中には"男に手厳しすぎる絶世の美女"や"雇い主に夫でもないくせにと言い放った女"も……。
アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗