ドーハ世陸の最強メンバー400mリレー銅メダルは東京五輪の金メダルにつながるのか
ドーハ世界陸上の男子4×100mリレー。日本が攻めのレースで2大会連続の銅メダルを獲得した。予選は小池祐貴(住友電工)、白石黄良々(セレスポ)、桐生祥秀(日本生命)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)の4人で、日本歴代3位タイの37秒78で2組2着。全体3番目で決勝進出を決めると、翌日のレースでは100m9秒98の小池をメンバーから外した。予選と決勝で同じメンバーを組むことがポリシーという土江寛裕・男子短距離オリンピック強化コーチからすれば、大きな決断だった。 「予選が終わって分析をして、小池君が個人種目を含めて、本来の走りができていないことが数値的にもはっきりしました。反対に多田君、ケンブリッジ君という控えの選手がベストの動きをしていたので、交代することに決めたんです」 1走のリザーブは多田修平(住友電工)で、その他の交代はケンブリッジ飛鳥(ナイキ)が予定されていた。多田に出場が告げられたのは14時からのミーティングだった。本番の約8時間前になる。一方、同種目での世界大会初出場となった白石は、男子200mで予選敗退したものの、400mリレー予選はサニブラウンとそん色ないタイムで走っており、続けて起用された。 決勝は多田、白石、桐生、サニブラウンというオーダーで挑戦。圧倒的な走力を誇る米国に遅れをとったが、お家芸のアンダーハンドパスでしっかりとバトンをつなぐ。そして3走・桐生で2位争いまで浮上。最後はサニブラウンが英国と競り合うようにゴールを駆け抜けた。 優勝は米国で37秒10、2位は英国で37秒36。日本は目標にしていた日本記録(37秒60)を更新する37秒43で3位に入った。ブラジルが37秒72で、上位4カ国がそれぞれのエリア記録を塗り替えた。
決勝で攻めたバトン
レース後、日本に2大会連続の銅メダルをもたらした4人はこんな感想を口にしている。 「いきなり決勝だったので、すごいガチガチであまり覚えてないんですけど、いい位置で渡すことができたのかな。小池さん、ケンブリッジさんのふたりを代表して走ったので、最低限、メダルを取ることができたので本当に良かったです」(多田) 「200mがいい結果ではなかったですけど、リレーを走らせてもらうからには、自分のできる最大限の力を発揮しようと思っていました。加速に乗ってしまえばいける気しかなかったので、感覚的にもいい走りができましたし、バトンパスもスムーズでした」(白石) 「予選はまだ信頼がないのか分からないですけど、ハキームは軽く出ていた部分があったので、『それはやめてくれ』と頼みました。思い切り出ても絶対に渡すつもりでした。それが決勝では出せたのかなと思います。ただ僕がバトンを渡したときに米国と英国が前にいたので、目標の色に届かなかったなというのが一番の感想ですね」(桐生) 「リレーは100mと違う楽しさがありました。過去2大会は見ている側だったので、走っている選手はこんな気持ちなのかなという感じで、最後は笑顔になりました。日本チームは、バトンをしっかり渡してくれるのを信じて走れるのが一番の強み。マジメな性格もそうですし、他国と比べてバトンの練習量も多い。謎の信頼感がありますね」(サニブラウン) 今大会の男子短距離勢の流れはあまり良くなかった。サニブラウン、桐生、小池が出場した100mは準決勝を突破することができず、小池、白石、山下潤(筑波大)が出場した200mは予選で敗退。4×100mリレーの予選は好タイムこそ出たものの、米国と英国のいない組で南アフリカに先着を許している。 それでも決勝ではタイムを0.35秒も引き上げてきた。予選は“安全バトン”だったが、決勝では、それぞれが攻め込んだ。土江コーチはサニブラウンに、「失格してもいいから思い切り出て、桐生は必ず渡すから」と伝えている。