「遠い国の出来事ではない。一人ひとりが考えることが重要」ロシアによるウクライナ侵攻
遠い国の出来事ではない
遠藤乾: ウクライナ侵攻は遠い国の出来事だと感じている方も多いかもしれませんが、この二点だけは自分事としてとらえていただきたいです。 一つは、日本はすでに実質的な効果を伴いながら、ロシアへの制裁に参加しているということ。ロシアが日本あるいは日本の企業や国民に向かって、何らかの敵対行為をとったとしてもなんらおかしくない段階に入っていることは、念頭に置いた方がよいでしょう。 そしてもう一つは、ウクライナ侵攻に似た出来事が近くで起こったとしたら、日本は何ができるのかということ。例えば台湾。中国は台湾の主権を認めてはいないんですね。日本はそういった地域と物理的に距離が近いので、今のうちから思考実験をする必要があると、私は思います。 ドイツは長らく紛争地に武器を供与することをしてきませんでしたが、今回のウクライナ侵攻にあたっては政権が方針を大転換し、ウクライナに武器を送りました。それほどの脅威だということです。 この先に万が一、同じような構図で台湾が攻撃されてしまった時、日本は何ができるのか。そして、何ができないのか。一人ひとりが考えておくべき状況だと感じています。 ----- 遠藤乾(えんどうけん) オックスフォード大学政治学博士(D.Phil)。著書に『統合の終焉』(2013年、読売・吉野作造賞)、Presidency of the European Commission under Jacques Delors: The Politics of Leadership (1998)。全8巻の岩波シリーズ「日本の安全保障」(2014-15)の共同編集代表、朝日新聞論壇委員を経て、毎日新聞や共同通信などでコラムを連載中。