最古の“空飛ぶ”哺乳類化石発見、恐竜時代に始まった哺乳類の「多様性」
ジュラ紀後期における哺乳類の飛行記録
さて哺乳類最古の飛行性を備えた化石記録の論文を、学術雑誌Natureにおいて、2週間くらい前に目にした。 Meng等(2017)の論文において初めて命名された、ジュラ紀後期(約1億5000万年前)の新属新種「Maiopatagium furculiferum(マイオパタジウム・ファルキュリフェルム)。化石は中国遼寧省のジュラ紀後期(約1億5千年前)の地層より発見された。 ・Qing-Jin Meng, David M. Grossnickle, Di Liu, Yu-Guang Zhang, April I. Neander, Qiang Ji, Zhe-Xi Luo. New gliding mammaliaforms from the Jurassic. Nature, 2017; マイオパタジウムは、初期の哺乳類形類(Mammaliaformes)に属すると研究者は考えている。分類学的にカモノハシ類からヒトを含む全ての現生種の哺乳類を全て含む哺乳綱(Mammalia)より、もっと初期(原始的)の、中生代に絶滅した一大グループ)にあたる。 属名(Maiopatagium)の意味はラテン語で「母なる皮膚状の膜」という意味だ。種名(furculiferum)の意味は鎖骨という胸の筋肉を支える左右両方の骨が、非常に発達し、結合癒着していたことに由来する。(注:こうした胸の骨は鳥を含む一部の獣脚恐竜のグループにおいて「furcula」と呼ばれ、長い前脚や羽の構造を支える鍵とされる。その類似性のため、あえてこの名前が種において選択された。) 今回、この論文の著者の一人で、研究チームの中心メンバーでもあるシカゴ大学の羅哲西博士より、直接写真を分けていただいた(謝々!)。まずはこの斬新な骨格化石の写真を見てみよう。
頭骨から尻尾の大部分までほぼ全身骨格が丸ごと、体のちょうど右側をこちらに向ける感じで保存されているのが分かる。写真右側にある物差し(cm)によると、胴体は10cm、尻尾をあわせると全長約40cmくらいだろうか。(小型の猫ほどのサイズのようだ。)全体の体つきから見ると、手足は非常に長く、指の長さも印象的だ。頭はそれほど大きくない。 この化石骨格で一番興味深い点は、肩から前脚と後脚全体にかけて見られる、薄茶色の影がかかった部分で、かなり広範囲に見られる(注:濃い緑色のものは体毛だ)。これは筋肉にしては大きすぎるし場違いだ。実は発達した皮膚の一部で、飛行性を可能にした膜だと推定される。肩辺りから前脚(手首付近)と後脚(足首付近)が、このいわゆる「皮膚膜」によってつながれていると分かる。こうした皮膚膜は、現生のムササビやモモンガにも飛膜として見られる。 そしてもう一つ、別の中生代の哺乳類「Vilevolodon(ヴィレヴォルドン)」においても、この形態が今回の研究チームによって確認された(写真3)。二つ別の化石標本においても同じような皮膚膜の跡が見つかったので、飛行性を備えていた信憑性はかなり高くなる。