白色矮星が80億年以上 “年を取らない” ことがある理由を解明
天の川銀河にある恒星の約97%は、最終的に「白色矮星」という天体を残します。白色矮星は核融合反応が停止した “死んだ星” であり、持っていた熱を徐々に放出し冷えていきます。しかし近年、この説明が当てはまらず、数十億年も冷却が停止していると見られる白色矮星が次々と見つかっています。白色矮星の熱は年齢を推定する指標となっているため、 “年を取らない” プロセスがあることは重要です。 今日の宇宙画像 ウォーリック大学のAntoine Bédard氏、ビクトリア大学のSimon Blouin氏、およびプリンストン高等研究所の程思浩氏の研究チームは、白色矮星の内部をモデル化した研究を行いました。その結果、固化した小さな塊が浮上することによって生じる重力エネルギーによって、白色矮星の表面温度が80億年以上も一定に保たれるほどの熱が発生することを突き止めました。この結果は、白色矮星の年齢を指標とした様々な研究に影響を与えそうです。
■「白色矮星」はそれほど “死んだ星” ではない
太陽のような恒星は、中心核で起こる核融合反応によってエネルギーを放出するとともに、重力によって潰れてしまうことを防いでいます。しかし、その源となる元素はいつか枯渇してしまうため、やがて核融合反応が停止し、重力によって潰れてしまいます。最終的な運命は恒星の質量によって異なりますが、太陽の8倍未満の質量を持つ恒星は、1cmのサイコロサイズが1トン以上にもなる高密度な中心核を残すと言われています。これが「白色矮星」です。 白色矮星はその名の通り白く輝いていますが、これは恒星の中心核にあったという名残であり、いわば余熱です。白色矮星は核融合が起こらない “死んだ星” であるため、余熱が徐々に宇宙空間へと逃げ出し、冷えていきます。白色矮星の表面温度と明るさは相対関係となるため、白色矮星の明るさは形成されてからの年数、つまり白色矮星の年齢を反映していると予測されてきました。 しかし、白色矮星についての研究が進むと、そこまで単純ではないことが分かってきました。白色矮星の観測データが増えるに従い、白色矮星の明るさから推定される年齢と、その他の方法(※1)で推定される年齢が大幅にズレているものが次々と見つかるようになったのです。そのような白色矮星は、質量が大きいグループの約6%を占めています。 また、白色矮星の内部は形成当初は “液体” であり、その後 “固体” へと冷え固まることが予想されています。ここでいう液体や固体は比喩表現的ではありますが(※2)、それでも私たちに身近な物質の液体や固体と同じく、相転移によって熱(潜熱)が生じることが予想されています。 このように、白色矮星は従来考えられていたほどには “死んだ星” ではないことが分かってきていますが、それでもこれまでに解明された加熱プロセスでは、せいぜい冷却する時間を10億年程度遅くすることしかできません。数十億年ものズレを説明するには別の知られていないプロセスが必要となります。 ※1…例えば、同じ星団内の恒星の年齢から推定された白色矮星の年齢。星団内に存在する恒星はほぼ同時に形成されたとみなされるため、このような推定が可能となっています。 ※2…白色矮星を構成する物質は、通常の原子と比べて電子軌道が極限まで縮まっている(縮退している)と予想されています。白色矮星内部の状態を表すために固体や液体という言葉を使う時は、縮退した原子が結晶構造を形成している場合は固体、ランダムである場合は液体と表現しています。