白色矮星が80億年以上 “年を取らない” ことがある理由を解明
■80億年以上も持続する加熱プロセスを解明
Bédard氏、Blouin氏、および程思氏の研究チームは、白色矮星の内部についてのモデルを構築し、この謎の解明に取り組みました。この研究では、数十億年も安定して続く冷却停止プロセスを探すことにあります。程思氏は2019年に別のプロセスによる数十億年もの冷却停止プロセスを提案したこともありますが、これは非現実的な条件であるとみなされています(※3)。 研究チームはより現実的な説として、白色矮星の内部の固化プロセスをより詳細に検討しました。白色矮星は内部から固体化すると考えられていますが、これまでは大きな塊が中心部に沈んだまま存在するものと考えられてきました。しかし研究チームがより詳細にプロセスを検討すると、従来考えられていたよりもずっと小さな複数の塊が生じることがあることが分かりました。 この固体は1粒1粒が小さい上に、液体に対して密度が低いため、水に対する氷と同じように浮き上がると考えられます。すると、相対的に密度が高い液体の部分は沈み込むため、重力エネルギーが熱へと変換されます。今回のシミュレーションでは、このプロセスが80億年以上も表面温度を維持するほどの熱を発生させることを示しました。 ※3…2019年の研究ではネオン22が沈降することによる重力エネルギーが熱源であると推定されていましたが、この説を満たすには重い白色矮星に含まれていると推定される量の5倍も多いネオン22が必要です。
■白色矮星を指標とした天文学の研究に影響
いずれにしても、冷却停止プロセスは白色矮星のごく一部でしか起こりません。今回示された固体の浮上による加熱プロセスがなぜ一部の白色矮星でしか起こらないのかまでは不明ですが、研究チームは白色矮星の形成過程がカギであると考えています。重い白色矮星は恒星の中心核から直接生成されるのではなく、恒星または白色矮星が衝突することで生成されると考えられています。衝突によって白色矮星の内部は激しくかき乱されるため、小さな塊を生じることに繋がるのかもしれません。この仮説は、数十億年も冷却が停止しているとみられる白色矮星が、重い白色矮星の中の約6%という少数派であることと一致しています。 白色矮星の年齢の推定は、例えば近くにある恒星の年齢など、様々な指標に使われています。しかし、冷却停止プロセスは宇宙の年齢である138億年と比べて十分長い80億年以上にわたるため、年齢が推定された白色矮星の中には実際よりももっと古いものが混ざっている可能性があります。今回の研究は、白色矮星の年齢に基づく天文学の研究に大きな影響を与えるかもしれません。 Source Nicole Crozier & Jennifer Kwan. “Discovery tests theory on cooling of white dwarf stars”. (University of Victoria) Antoine Bédard, Simon Blouin & Sihao Cheng (程思浩). “Buoyant crystals halt the cooling of white dwarf stars”. (Nature) Pier-Emmanuel Tremblay, et al. “Core crystallization and pile-up in the cooling sequence of evolving white dwarfs”. (Nature) Sihao Cheng (程思浩), Jeffrey D. Cummings & Brice Ménard. “A Cooling Anomaly of High-mass White Dwarfs”. (The Astrophysical Journal) M. E. Caplan, C. J. Horowitz & A. Cumming. “Neon Cluster Formation and Phase Separation during White Dwarf Cooling”. (The Astrophysical Journal Letters)
彩恵りり