芸人・鈴木ジェロニモ「仕事で失敗したときに読みたい短歌」とおすすめの歌集を紹介
親との関係性がしんどいときに読みたい歌
「綿菓子のこころと牙のこころあり今夜どちらも見捨ててねむる」 大森静佳『ヘクタール』¥2310/文藝春秋 鈴木さん この歌は、「綿菓子のこころと牙のこころ」という100%相似の関係性ではない、絶妙な心の状況を具体的に描き出しておきながら、それを捨てて、最終的には自分の心のために時間を使うことを選んでいます。言葉がとても美しい歌集ですが、おそらくそれは他人にどう思われようとか、自分をどう見せようとかじゃなく、大森さんが心のとおりに、自分のために歌をつくっていった結果たどり着いたものなんですよね。 親との関係性について僕が自分事として語るのは難しいし、どのくらい結びつくかわかりませんが…親のほうが年齢も上だし、敬うべきだと思うと親主体になりがちだけれども、親と過ごしているときの自分のために言葉や心を使うことが大事なのかなと。 すごくシンプルに言うと、親といるときの自分を主人公だと思えるかどうか、みたいなことだと思うんです。その感覚が、何か圧倒的なものに対する自分という小さな存在を肯定してくれる気がします。そのまま親との関係性にトレースできるものではないかもしれませんが、ひとつの捉え方として。 お笑い芸人・歌人 鈴木ジェロニモ 1994年生まれ、栃木県さくら市出身。プロダクション人力舎所属。R-1グランプリ2023、ABCお笑いグランプリ2024準決勝進出。TBS『ラヴィット!』の「第2回耳心地いい-1GP」準優勝。第4回・第5回笹井宏之賞、第65回短歌研究新人賞最終選考。ボイスパーカッションを取り入れたネタが特徴的。2022年より短歌のライブイベント「ジェロニモ短歌賞」を主催。2023年にプチ歌集『晴れていたら絶景』を刊行。YouTube動画「説明」が穂村弘氏、高橋源一郎氏に注目されるなどじわじわ話題になっている。 撮影/垂水佳菜 構成・取材・文/国分美由紀