「父はなぜ死んだのか」 89歳父の死の理由を求めて 災害関連死の認定を待つ遺族 病院の看護記録に記された「点滴は止めないといけない」 能登半島地震から1年
佐藤さん 「でも、中学校の体育館で手続きの準備は到底できませんよ。自宅は全壊して、当時、手続きまで意識がいかないくらい大変な状態でした」 その後、5月の下旬に仮設住宅で暮らすメドがつき、生活の再建をするのと同じくして、病院に資料の取り寄せを依頼した。 9月に入り、病院から当時の看護資料が示された。そこには「点滴は止めないといけない」と記されていた。その記録によると、1月4日の時点で点滴を止めることについての議論がされ、1月5日の早い段階で点滴治療が中断されていたという。佐藤さんは「やむを得ない対応というのは理解できる」としながらも、資料を取り寄せて初めて知った事実に驚いた。 佐藤さん 「地震がなければね、日がゆっくり落ちていくように亡くなることもできたのかなと考えることはあります」 ■認定まで長い道のり 自治体ごとの審査に課題も 直接の被害ではなく、たとえば避難途中や、避難後の特異な環境下における死亡事例において、災害との「因果関係」が認められるものを災害関連死という。2024年12月24日までに、石川県内では計255人が災害関連死と認められた。2016年の熊本地震での災害関連死、222人を上回る。 1995年の阪神大震災以降、徐々に「災害関連死」という言葉の認知度は広まってきたが、「課題は山積だ」と弁護士の在間文康氏は話す。 災害関連死の申請に詳しい 在間文康 弁護士 「災害関連死という言葉を知っていたとしても、申請までに▼心理的ハードルと、▼物理的ハードルがあります。心理的ハードルは、ご遺族が申請までに気持ちが向かないというケース。そして、物理的なハードルとしては、書類、資料の提出が被災生活の中で揃えるのが難しいということです。」 認定は自治体が招集した審査会によって行われるが、2011年の東日本大震災の認定をめぐっては、自治体ごとの認定率に差が生じた。 日弁連が2013年に行ったアンケートによると、福島県の自治体では認定率が86%にのぼった一方で岩手県の自治体では60%にとどまった。国は、災害関連死の認定については統一的基準を定めていないが、そうした基準を設けることにも難しい側面があるという。