記者の質問に答える阿部一二三（代表撮影）

　パリ五輪の柔道男子66キロ級で2連覇を目指す阿部一二三（26）が、怪物から得た教訓で油断を排除していた。 　29日、都内でパーク24所属3選手の合同取材に応じ、ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者の井上尚弥（31＝大橋）の世界戦から「やっぱ怖いな」と、勝負に絶対はない、と学んだことを明かした。 　5月6日に東京ドームで行われた井上－ネリ戦を生観戦。「モンスター」井上が1回にプロ初ダウンを喫した、まさかの場面を目の当たりにし「ボクシングは10カウント以内に立てば仕切り直せるけど、柔道に置き換えて、あれがもし一本負けだったら1回戦で終わり。より気が引き締まり、絶対に油断はできないと思った」と痛感させられた。 　自身は19年8月を最後に無敗で、米グレースノート社のメダル予想でも常に金の絶対王者。「自分と重ねながら」最後は6回TKO勝利を見届け、東京五輪に続くV2へ「勝って当たり前はない」と隙を消した。 　新たな野望も抱く。前人未到の4連覇が最終目標だが、意外にも発祥国日本で例がない五輪2階級制覇へ「誰もいない？　そう言われるとね（笑い）」と前のめりになり「実は挑戦してみたくて頭の片隅にはあった」と28年ロサンゼルス大会以降の73キロ級への転向も示唆した。パリ路は、まだまだ夢半ばだ。【木下淳】