ガーディアンズ、ボート監督史上最短の引退2年後で最優秀監督賞受賞
全米野球記者協会会員による最優秀監督賞が19日(日本時間20日)に発表され、ア・リーグはガーディアンズのスティーブン・ボート監督が選出された。ボート監督は全30票中27票の1位票を集め、2位票が2、3位票が1で計142ポイントを獲得。2位のM・クアトラロ監督(ロイヤルズ)は73ポイントで約2倍の大差をつけた。ガーディアンズ監督では史上3人目。球団史上5度目の受賞はホワイトソックスに並ぶ最多タイとなった。2022年シーズンまで現役で、現役引退後2年での最優秀監督賞は史上初だった。 今オフ、メジャー8球団が新監督を迎えた。ブルワーズを5度もポストシーズンに進出させたクレイグ・カウンセル監督は、史上最高額となる5年4000万ドル(約60億円)でカブスに移籍。パドレスのボブ・メルビン監督もジャイアンツに引き抜かれた。そのパドレスはカージナルスで2年指揮を執った経験を持つマイク・シルトを、エンゼルスはレンジャーズ時代に2度リーグ優勝を飾ったロン・ワシントンをカムバックさせた。 他の4チームは新任の指揮官だが、今米球界で注目を集めているのがガーディアンズのスティーブン・ボート監督だ。新監督8球団中、ブルワーズ(パット・マーフィー監督=貯金9)、パドレス(貯金1)、ジャイアンツ(貯金1)と貯金がある球団は複数あるが、ガーディアンズは貯金18。36勝18敗でア・リーグ中地区を独走する勢いだ。一昨年まで現役でプレーしていたボート監督は40歳(現役最年少はカージナルスのオリバー・マーモル監督の37歳)で、昨季はマリナーズのブルペンコーチなどを務めていた。ガーディアンズは名将テリー・フランコナ監督勇退で後任候補を45人ピックアップしていたが、ボート氏に白羽の矢がたった。 昨季76勝86敗に終わったガーディアンズ。開幕時総年俸は30球団中23位の9828万ドル(約148億円)と決して潤沢な資金はない。24歳で期待された2年目右腕ギャビン・ウィリアムズがキャンプで肘を痛め離脱。さらに開幕2連勝した球界を代表するシェーン・ビーバーも肘を痛めトミー・ジョン手術を受けた。5月初旬にはメジャーで1、2を争う1番打者に成長したスティーブン・クワン外野手も戦列を離れた。 そんな中、メジャー最多の54打点を叩き出しているホセ・ラミレス三塁手を中心にした充実した打線で、白星を積み重ねる。アスレチックスのコッツェー監督は「彼らは間違いをすぐ修正する。ラインアップ全体を通してボールに集中。三振をしないチームだ」と敵チームを評価する。実際、405三振は少ない方から4番目、強打のドジャースでも458三振を喫している事を考えれば少ない。 ガーディアンズのアントネッティ編成担当責任者は現在の状況を「これは我々の勝利。ボート監督の就任が私たちにシーズンに向けた素晴らしい基盤を与えてくれた」と指揮官の手腕を称えている。 ボート監督は現役時代、主にアスレチックスでメジャー通算794試合に出場し、打率2割3分9厘、82本塁打。2度オールスター戦にも選出されている。メジャーデビューから32打数ノーヒットの珍記録保持者だが、現役最後の打席では家族の見守る中、本塁打を放ったことでも知られる。 アリッサ夫人とカリフォルニア州ダブリンのスクール・オブ・イマジネーションを支援。障害、自閉症などの発達障害を含む子どもたちにサービスとサポートシステムを提供し表彰もされている。また、夫人が元バスケットボールの選手で高校の監督を務めている関係で、オフには毎年のようにバスケットのレフェリーを買って出ている。だから、アスレチックス時代にはレフェリー姿のボブルヘッド人形も配られた。選手時代からクラブハウスのリーダーとして人望があり、将来の監督の器と評判だった。 (蛭間 豊章=ベースボールアナリスト) 5月28日付けヒルマニアを加筆修正しました。
報知新聞社