信じていた社長まで「真っ赤なニセモノ」!?…闇に葬り去られた「二重のなりすまし詐欺」の真相とは
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第68回 『「そうして騙されたのが、この私なのです」…被害者である経営コンサルタントが語る、複雑すぎる“入れ子構造”の「地面師詐欺」』より続く
「おはよう」が演技だなんて…
コンサルタントが記憶をたどってこう悔しがる。 「くだんの建設会社の社長によれば、前の所有者の春山が、まだ立ち退いていないという話でした。それで、現地の中野の家に確認に行きました。そうして春山の家を訪ねたら、門が閉まっている。朝の10時前でした」 コンサルタントは、この日の午前11時に建設会社側と打ち合わせする予定だった。その前に物件を下見しようとしたのだとこう話した。 「で、留守かな、と思っていると、タイミングよく向こうから、建設会社側の関係者が歩いてきたのです。『おや社長、こんな時間にどうしたの? 私もたまたま確認に来たんですよ』と私に話しかけてきました。それで、立ち話もなんだから、と言われ、近くの『ココス』(ファミレス)へ行ってお茶を飲んだんです」 コンサルタントは、春山の家の前で建設会社側の人間とばったり出くわしたのだという。こう続けた。 「私たちは取引に使う納税確認書なんかの書類を整えなければなりません。その件を伝え、ココスで建設会社の人と別れ、再び春山の家の前に戻りました。すると、草が伸び放題になっている庭の奥のほうから、一人の老人が道路に面したこちら側の門へ歩いてやって来るではないですか。家の玄関から門まではおよそ10メートル、その玄関の右隣にも5メートルくらいの庭が続いていて、草木の茂ったよく見えないようなところからその老人が現れ、こちらへ向かって来たんです」 言うまでもなく、この老人がニセ春山である。コンサルタントの声が次第に大きく、早口になってくる。 「すると、そのニセ春山は家の隣で建物の工事をしている現場の職人と話しだしたんです。『おはよう』みたいな感じで声をかけていて、まるで顔馴染みのように見えました。まさか、それが演技だなんて、こちらも思わないでしょっ」 工事現場の職人までが偽者ではないだろうが、単純に挨拶されたので言葉を交わしただけかもしれない。だが、コンサルタントは、そのやり取りや光景を見てニセ春山を元の地主だと信じ込んでしまった。
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