信じていた社長まで「真っ赤なニセモノ」!?…闇に葬り去られた「二重のなりすまし詐欺」の真相とは
建設会社社長までもが真っ赤なニセモノだった
そのまま取引に応じた。こうも話した。 「驚いたことに実はニセモノはニセ春山だけではありませんでした。春山から土地建物を買ったと信じ込んでいた建設会社社長までが真っ赤なニセモノだったのです」 つまるところ、地主の春山と買主の建設会社社長を騙った2重のなりすまし詐欺だという。それが、わずかの期間に立て続けに発生しているそうなのである。 第一のなりすまし事件では、建設会社が4億円あまりの被害に遭っているが、2回目はまだ所有権の移転登記はなされていない。どのくらいの被害になるのか。そう尋ねると、コンサルタントがこう臍を噛む。 「あそこの土地には借地権もあるので、6億円以上の価値になるでしょう。まあ、うちの場合は金の流れが途中で止まっているから被害はその一部で、2億3000万ぐらい消えています。虎ノ門の貸し会議室で会ったニセ社長に対しては、うちの司法書士の先生がパスポートで本人確認までしましたので、現在は司法書士保険で処理しようと話し合っている最中です。ただ、2回目の詐欺は加害者がいまだ誰なのかわからない。だから訴訟もできてない」
二重のなりすましの真相は?
地主の春山は16年5月20日、東京地裁に「所有権移転禁止」の仮処分を申し立て、丸の内警察署にも被害相談をしている。2度目のなりすまし詐欺の被害者となったコンサルタントは、今になってこう首を捻る。 「よくよく登記簿謄本を見ると、本物の春山自身も怪しい。不思議な相続税の支払い方をしているのです。土地を担保にして銀行からいくらでも借りられるし、一度に納税すればいいのに、少しずつ小分けに払ったせいで、税務署から差し押さえを食らっています。フィリピンパブにはまりすぎたのかどうか知らんけど、相当金に困っている感じなんです。そこに付け込まれたのか、それとも知っていたのかも」 肝心の地面師グループの手掛かりはつかめていないのか。 「どうやら実行犯は、埼玉グループのようですが、そこに(工作のための)金を出してやらせた連中もいるみたい。やつらは横のネットワークがあるから、どこでどうつながっているかわからん」 この中野弥生町の事件の話をしてくれたコンサルタントの素性を明かすと、土井淑雄グループの中心人物である。繰り返すまでもなく土井は積水ハウス事件で預金小切手の現金化を担った。その土井グループがこの件にかかわっていたのである。2重のなりすましという奇抜な話は、地面師の言い逃れなのだろうか。真相は捜査結果を待つほかない。 『架空受注を隠蔽するために「闇取引」に手を染める…積水ハウスの地面師被害に隠された「負のスパイラル」』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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