産業観光、訪日客に照準 石川、富山の企業 若鶴酒造、来年2月ブレンド体験ブース
●英語スタッフ増員 石川、富山県内の企業がインバウンド(訪日客)に照準を合わせた産業観光を展開している。若鶴酒造(砺波市)は来年2月をめどに、ウイスキー蒸留所に原酒のブレンド体験ブースを開設し、海外で人気の国産ウイスキーを売り込む。インバウンド全盛の中、英語が堪能なスタッフの増員や案内の英語表記といった動きも見られ、各社は自社の特色を海外にアピールする好機ととらえている。 若鶴酒造はウイスキー蒸留所「三郎丸蒸留所」を改装し、原酒をブレンドする「ブレンダー室」の広さを従来の5倍に拡大する。国内ではブレンダー室を公開する蒸留所は珍しく、2月に開始を予定するブレンド体験を見学の目玉にする。 国産ウイスキーの人気が高まる中、三郎丸蒸留所の見学者数は増加している。2023年10月~24年9月は前年比12%増の3万3710人が訪れ、このうちインバウンドは57%増の1580人と増加が目立つ。同社は30年度までに海外の売上比率を現在の20%から50%に引き上げる目標を掲げており、担当者は「蒸留所での体験を通して海外ファンを増やしたい」と意欲を見せる。 「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しとなったことを受け、福光屋(金沢市)も訪日客の酒蔵見学の受け入れ体制を強化する。 同社は冬季(11~3月)限定の見学で、昨年度からは英語が堪能なスタッフ2人を増やした。昨シーズンは来訪者の約4割が外国人で、今季は既に1カ月先まで予約がほぼ埋まっている。担当者は「引き続き体制を強化し、日本酒の文化を国内外に広く発信したい」と話した。 ●多言語対応も計画 富山県に生産拠点を置くYKK AP(東京)は11月から、創業の地である黒部市の黒部製造所内に展示施設「YKK AP技術館」を開業した。インバウンド向けにアルミサッシ、断熱性能の高い窓などの展示品の説明看板は日本語に加え、英語も用意した。グローバルに展開するだけに、今後はQRコードを設け、スマホをかざせば中国語など多言語に対応する体制も整える予定だ。 来年初夏に蒸留酒ジンの製造施設を稼働させるのは、菓子・飲食店を展開する「ぶどうの木」(金沢市)。見学の受け入れも計画しており、担当者は「自然や農業、里山の取り組みの発信になり、外国人客も含めて積極的に受け入れていきたい」と話した。 繊維メーカーのカジグループ(金沢市)は、かほく市大崎で整備する新工場「カジファクトリーパーク」で来年4月のオープン後、工場見学を受け入れ、併設のセレクトショップで自社ブランドの製品を買えるようにする。北陸コカ・コーラボトリング(高岡市)は今年5月に砺波工場の見学受け入れを午後のみから午前にも拡充した。