北海道千歳市「ラピダス」狂騒曲…半導体製造メーカー進出で土地や平均家賃は2倍に!
【不動産業界 噂の現場】#3 半導体製造「ラピダス」の進出により、北海道千歳市の住宅市場が急激な変化に見舞われている。家賃は2倍以上に高騰し、空室は極端に少ない状態が続いている。 【写真】北海道美瑛町 黄金色に輝く小麦畑と「パッチワークの丘」 ■土地や平均家賃は2倍に 不動産情報サイト「LIFULL HOME's」の調査では、同社の昨年2月の工場建設進出発表以降、シングル向け賃貸物件の平均家賃は急上昇し、掲載物件数は発表から6カ月で88.1%も減少し、現在も枯渇が続く。ファミリー向け物件では、平均家賃が4.7万円から10.5万円と2倍以上になった。 約4500人の作業員が働く現場は、建設車両が絶え間なく行き交い、真っ赤な外壁が日に日に姿を現す。半数ほどが千歳市内や恵庭・苫小牧などに住まいを求め、既存の賃貸物件の大半が建設関係者で埋まる。地元の不動産会社も「物件が出ても即日で決まる。紹介する部屋がない」と話す。 変化は地価にも及ぶ。「以前に坪10万円で買った土地が、150万円から200万円になっています」と札幌市内のディベロッパーは証言する。オフィス賃料も札幌市内と遜色ない水準に近づいてきた。周辺ではホテル5棟(約700室)の建設計画が水面下で進行中だ。 半導体工場には研究施設も併設予定だ。エリート研究者や技術者の移住で、札幌の高級マンション需要にも影響が及びそうだ。 一方で当てが外れたと語るのは、札幌市内の不動産投資家だ。「地元の名士とも言える企業が千歳市内の好立地にたくさんの土地を所有しているが、創業家の方針でいっさい売ってくれない。賃貸住宅に適した用地が見つかりにくく、隣接の恵庭市などに求めざるを得ない」と出遅れを示唆する。 工場では来年4月予定の試作ライン稼働開始時点で約1000人の工場労働者が必要とされ、本格稼働後は2000人以上の雇用が見込まれる。さらに、製造装置の保全などで関連産業の従事者も続々と流入してくる見通しだ。 「24時間稼働の工場なので、従業員は通いやすい工場周辺に住むだろう」と市内の不動産業者は指摘。近辺の住宅地需要は、今後さらに高まることが予想される。住民からも、家賃や地価の高騰を心配する声が上がりだした。 この課題に対応するため、千歳市は昨年12月、不動産業界と連携して「居住支援千歳プロジェクトチーム」を立ち上げた。窓口を一本化し、物件紹介から入居後のフォローまで、企業従業員の住まい確保をワンストップで支援する態勢を整えている。所管の次世代半導体拠点推進室によると来春までには約900室の新規住宅供給も予定されており、物件枯渇はじきに解消されそうだ。 赤い壁の巨大工場が街の運命を塗り替えつつある。地元では期待と不安が交錯している。 (ニュースライター・小野悠史)