久遠チョコレートの奇跡~20年の格闘の物語
150種類の味わいに客殺到!~ショコラティエは障害者430人
東京・池袋から電車で30分。埼玉・川越市の街の一角にある「QUONチョコレート」小江戸川越店。冬でも売れまくるのが生チョコソフトクリームの「QUONクリーム」(530円)だ。本格的な濃厚ビターチョコが味わえる逸品で、コーンの内側がチョコでコーティングされている。 【動画】150種類の味わいに客殺到!「久遠チョコレート」
だが、圧倒的看板商品はカラフルでさまざまな種類がある「QUONテリーヌ」(270円)という手作りのチョコレートだ。「ベリーベリー」にはいちごのドライフルーツ、「抹茶」には黒豆など、チョコとの絶妙な組み合わせが客を魅了している。リピーターが多い理由はその味わいの多彩さで、150種類以上ある。チョコレートは本来の風味を楽しめるよう、必要以上の油脂を加えないピュアチョコレートだ。 そんな魅力が口コミで広がり、久遠チョコレートは急拡大中。開業10年で北海道から九州まで全国40店舗を展開している。その様子は『チョコレートな人々』という映画にまでなっている。 兵庫・芦屋市の県立芦屋高等学校で開かれた上映会。映画を観た生徒たちは「なかなか見ない形の働き方で成功していることに感動した」「『すごい』としか言いようがない。尊敬のひと言に尽きる」「今までにない会社で難しい面もたくさんあると思うので、こういう会社が増えればいいと感じた」などと、感想を語る。
愛知・豊橋市の商店街の一角に「QUONチョコレート」豊橋本店がある。久遠チョコレート代表・夏目浩次(46)は「全ての店がガラス張りになっています。厨房の中の働く様子を見てもらうためです」と言う。 実は、久遠チョコレートの秘密は商品の生産体制にある。チョコレート作りを担うのは多くが障害者なのだ。全国の久遠チョコレートでショコラティエとして製造に携わる障害者は、700人中430人にのぼる。
さらに夏目が豊橋市内に作ったのが「パウダーラボ」。チョコレートに混ぜ込む食材を加工する工房だ。 「障害が重度の方たちの働く場として3年前にスタートしました」(夏目) 「パウダーラボ」で行われていたのは石臼で材料をパウダー状にする作業。その中で、重度の知的障害とダウン症の荒木啓暢だけ違う機械を使っていた。 「水平移動が苦手なので、縦型にして石臼と同じ構造にした。最初はじっとしていられなかったが、今は1日5時間働いている」(夏目) 障害者が働けるよう、さまざまな工夫で作業を可能にしているのだ。 また久遠チョコレートは、障害者に通常ではありえない高い賃金を払っている。 この直営店では重度の障害者には月給5万円以上。中度・軽度の障害者には約17万円を支払っている(フルタイムで働いた場合)。これは全国平均の10倍の金額だ。 「賃金が高ければいい、安ければダメという怒りということではなく、同じ人間なのに、極端に選択肢がなくなり、しかも『仕方ない、そういうものだ』とするあり方に、ナンセンスだと思ったんです」(夏目)