【特集】家を借りられない高齢者たち 「65歳を過ぎると難しい…」居住支援の現場にカメラが密着
■高齢者へ貸し渋りする理由
そもそも、不動産会社や大家が高齢者を敬遠する理由は何なのでしょうか?国土交通省の調査によると、高齢者の入居に対して賃貸人の7割近くが拒否感を示していることが分かりました。主な理由の一つが、居室内の死亡事故に対する不安です。 仮に居室内で孤独死が起きた場合、原状回復にかかる費用は最大で450万円といわれ、その費用を大家が負担するケースも少なくないのです。また、入居者が残した持ち物の処理に関わる問題や事故物件になった場合は家賃収入が減ってしまう問題。これらが高齢者への貸し渋りに繋がっていると考えられています。
■大家が高齢者を入居させるメリットも…
65歳以上専門の不動産会社の代表、山本遼さんは高齢者の入居であっても大家にはメリットがあると言います。 R65不動産 山本代表 「例えば 学生さんって4年くらいお住まいなんですが、ご高齢の方の平均入居年数って約13年といわれています。(年金によって)収入も支出もほとんど一定なので、ご高齢の方で(家賃を)滞納されるっていう方は(自分が担当したケースでは)ほとんどいらっしゃらない」 また、最近では様々な見守りサービスがあることで高齢者が孤独死するリスクも軽減され、理解を示す大家が出てきていると言います。
■高齢者ならではの転居の理由
住まいがあっても高齢者ならではの理由で転居しなければならないことも。この日、5か月ぶりに退院する76歳の男性は、身体的な問題で転居することに。一昨年、男性は2階のアパートの階段から転落。大怪我をし、要介護5の認定を受けました。こたつでは、1階の部屋に住めるように2年前から居住支援を続けてきましたが、その後も転倒による骨折で入退院を繰り返し、高齢者向けの施設を探すことに。 76歳の男性 「もう足が言うこと聞かないからね。もうリハビリしてもこれは治らんって言われたから」 要介護5の男性が入れる施設を探すこと、およそ1か月。新しくできた高齢者施設が受け入れてくれることになり、実際に見学した男性は、その施設への入居を決めました。 76歳の男性 「(年齢が)60も70もあったら好きなことは言っておれないからね。年金もうちょっともらえればさ、いいんだけど、そうもいかんからね。それなりにいかないとしゃーない」 男性が3か月暮らした自宅では、こたつの吉田さんが手配した引っ越し業者が作業中。立ち会いが難しい男性に代わり、特別に荷造りも手伝います。 高齢者住まい相談室こたつ 吉田さん 「どうしても1人の人だと必要な方はうちでも立ち会ったりすることはあります」 段ボールに詰め込まれていく荷物の中には、男性が10代の頃から集めているという思い出のレコードも。 76歳の男性 「いつか聴いたるかなと思ってんやけど、なかなか…この狭い部屋やと聴くところがないんよ」 取材スタッフ 「施設だったらもしかしたら?」 76歳の男性 「聴けるかもな~。ほんなら聴けたらセットする」 部屋がきれいに片付いていく一方で、男性の胸の内にはある思いが募っていました。 76歳の男性 「人はみんな助け合いだと言うけどさ。やっぱしね、気の毒やで。(自分が)皆に迷惑かけているんだから。こんな体になって初めて気がつくわ。今までそういうことはなかったんやけど」