行政書士が「社労士資格も取れ」と後輩に教える歴史的背景~複数資格を持つ士業は成功しやすいか?~ (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
■資格複数保持者の憂鬱
まず資格を多数取るということは、それだけ時間と労力がかかります。行政書士、社会保険労務士、税理士、司法書士と取得しようと考えれば、稀代の天才を除けばどう考えても5年以上かかります。試験には「ツキ」もありますので、望んでいなかったとしても10年以上かかってしまう場合もあるでしょう。ですから、これから複数の資格取得を考えている人は、「時間を膨大に使う」という認識を持ってください。 そして本題の「複数の資格を持っていれば成功できるか?」については、「ビジネスの成功確率」という点で考えれば資格取得数と成功確率は関係しません。問題は、「多数の資格を持っていることが、成功確率を高めるか」ということですが、複数資格保持者には有利になる点と尽きない悩みがあります。 有利になる点は、いわゆるワンストップサービスが可能になることです。 一度依頼をもらえば、関連する仕事はすべて自分の事務所で受けることが可能になります。司法書士として会社の設立手続きを受ければ、社労士として社会保険・労働保険の手続きをし、そして税理士として顧問になるのです。ひとりで事務所を経営する間はキャパシティの問題もあるので限界も早いといえますが、1回で取れる仕事は大きくなりますし、また組織化ができれば事務所の拡大も可能でしょう。 一方で、デメリットもあります。 資格の保持数が多ければ多いほど、他士業からの紹介率は下がります。これはおおむね取得した資格の数と比例すると断定してもよいでしょう。たとえば、行政書士が社労士に仕事を紹介する場合、暗黙の了解として「行政書士の仕事も紹介してほしい」という気持ちの伝達があります。特に、他士業間での仕事の紹介発生率は非常に高く、開業間もないうちはそういった紹介は重宝するでしょう。 このように、複数の資格を保持するワンストップサービス事務所は、営業面で他と連携せずに独自に行うことが求められます。シビアに聞こえるかもしれませんが、もしあなたが誰の力も借りずに、自分の力だけで成し遂げたいと決意していたら、複数資格を持って事務所経営をするのも決して悪いこととはいえないでしょう。