殺人は償えるのか? 懲役刑はあくまで国家からの罰であって被害者への「償い」ではない…殺人事件の加害者と被害者にとっての謝罪
自分のしたことを思えば恵まれた環境ですらあります
話を番組に戻す。水原は被害者と加害者の関係についてこんなことを書いてきた。 (被害者遺族と加害者の)両者をつなぐ役割の必要性は常々考えていました。同囚と謝罪などについて話すことがありますが、(刑務所内でそのための)アクションを起こして良いのかどうかや、謝罪の是非についてなどの話がよく挙がります。 謝罪をしたいのだけど、それは自己満足かもしれない。事件のことを思い出させてしまう。苦しませてしまう。それを考えるとするべきではない。しかし、もし、相手が謝罪を望んでいたら……と。 また謝罪する場合、直接、被害者やご遺族とやりとりできないと思うから、どうやればいいのかという声もあります。 その間をとりもつ組織があればと(同囚と)話をしますが、これまでそういった組織の必要性が議題に挙がることはなかったのでしょうか。 この中の生活を見たい、知りたいというご遺族の方々が少なくないとのことですが、ご遺族の方々は加害者にどのような生活を、何を望まれているのでしょうか。 今の刑務所は教育にも、罰にもなっておらず、宙ぶらりんな状態にあるように思います。施設側も教育に関しさまざまな取り組みを行っていますが、なかなかその実はともなっていないように思います。罰についてはこれはほとんど機能していません。 服役前はどのようなところなのだろうかとあれこれと考えていましたが、実際に服役してみますと、食事はまずくなく、舎房も汚くありません。「自由」が無いとよく耳にします。 けれど自分はそうは思わず、不便な点はよくありますが、自分のしたことを思えば恵まれた環境ですらあります。これでいいのだろうかと、ときどき思います。 結局、教育も罰も機能していない中では、反省やここでの生活の送りかたは個人次第ということになります。 写真/shutterstock
---------- 藤井誠二(ふじい せいじ) 1965年愛知県生まれ。ノンフィクションライター。少年犯罪について長年にわたって取材・執筆活動をしている。著書に『人を殺してみたかった―愛知県豊川市主婦殺人事件』『少年に奪われた人生―犯罪被害者遺族の闘い』『殺された側の論理―犯罪被害者遺族が望む「罰」と「権利」』『黙秘の壁―名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか』、共著に『死刑のある国ニッポン』(森達也との対談)など多数。 ----------
藤井誠二
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