【税理士が教える】自分の財産額を把握していない人に今すぐやってほしいこと
親が相続対策しないまま亡くなると、残された家族や子どもは、膨大な手続きに苦労したり、争族に巻き込まれたり、相続税が払えなかったり…と、多大な迷惑をこうむります。本連載では、知識のない親御さんでも、ステップ式で5日で一通りの相続対策ができる『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)を出版した税理士の板倉京さんが、最低限やっておくべき相続対策のポイントを本書から抜粋して紹介していきます。 ● 財産のリストアップは「相続対策」の最初の一歩! ご自身の財産額を自分でも把握できていない人は要注意です。もしあなたに万一のことがあったら、ご自身もわかっていないことをご家族がわかるはずがありません。 本書「たった5日で相続対策」の、第一日目にやるのは「財産のリストアップ」です。 これは相続対策に限らず、今後のご自身のマネープランを考えるためにも大事。ぜひやっておきましょう。 「財産のリストアップ」では、最初に「預貯金の情報」から書き出していきます。 まずはすべての銀行口座の通帳を手元に集めてください。通帳のないネット口座は、口座の情報や残高のわかる部分を印刷するなどして、確認できるようにしてください。通帳のないネット銀行は、後から家族が探し出せない可能性が高い財産です。忘れないように、ピックアップしてください。 すべてを集めたら冒頭の山田さんのサンプルを参考にして、口座ごとにノートに必要事項を記載していきます(ノートはお手持ちのノートでかまいません)。 記載する際、通帳に合番をふっておけば、表との突合がしやすいですし、2年目以降の更新時に、「合番」と「残高」「備考」等の変更事項だけをノートの次の見開きなどに書き加えていけば済むのでおすすめです。 なお、必ず記載すべきものは「口座の情報(金融機関名・支店番号・口座番号)」と「暗証番号」「ネット口座のID・パスワード等」「残高」です。 ● 「暗証番号」を知られたくない方は 「暗証番号は知られたくない」という方もいるかもしれません。 ただ、自分が病気やけがで突然倒れてしまった場合でも、あらかじめ必要な資金を引き出すように指示しておき、「暗証番号」を教えておけば、子どもや家族が必要な資金を引き出すことができます。 入院費や介護費用、その間の生活費などすべてを子どもが立て替えるのは大変です。 「全部を書き出すのは不安……」というのであれば、「万が一のときに緊急的に使う口座」を決めて、その口座の「暗証番号」だけでも記載しておきましょう。 同様にネット口座にログインするための「ID・パスワードや取引に必要な取引ID」なども記載しておきましょう。自分の備忘録としても使えます。 「残高」は、3日目の「相続税の確認」や4日目の「遺産の分け方を決める」ためにも必要です。通帳記帳をして現時点の残高を確認しましょう。 ここで把握すべき残高とは、普通預金、定期預金、外貨預金といった「預貯金の残高」です。外貨預金は、記載した日の為替レート(TTB……外貨を買う時のレート)で円換算します。為替レートは銀行のHPなどで確認できます。 最近は、銀行でも投資信託などの運用商品を扱っていますが、それらはSTEP2(預貯金以外の金融資産・p44)で確認しますので、ここでは書きません。 ● 「備考」欄に書くべきことは? なお、各口座の枠の最後に備考欄をとっておきます。ここには、「口座の用途」「代理人制度について」「印鑑の情報」「保管場所」等を書きます。 「口座の用途」としては、「クレジット引落」「電話・水道光熱費」「年金」「株の配当」など定期的に引き落とされたり入金されるものを記載してください。 相続後に、うっかり口座を解約してしまうと、クレジットカードや水道光熱費の支払いができなかったり、株の配当が受けられなかったり、ということが起こりえます。そうなると、後々余計な手間がかかることになるのです。 あらかじめ引落や入金などの情報がわかれば、それらの解約・変更手続きをした後に口座を解約できるので、手続きがスムーズに行えて安心です。 「代理人制度」とは、口座の名義人が寝たきりや認知症になった場合などに備え、本人に代わって口座の取引ができる「代理人」を指定するサービスで、多くの金融機関が採用しています。口座は、原則本人以外は取引行為(入出金・解約等)ができないので、万一の場合に備え、代理人を指定しておくと便利です。 もしまだしていないなら、この機会に銀行に確認し設定しましょう。 「印鑑」もここで整理しましょう。印鑑がわからない場合は窓口に行って確認し、いくつもの印鑑を使っていた場合は、できれば一つに集約してください。二つ以上の印鑑がある場合は「A印鑑」「B印鑑」といった記号などで管理するのがおすすめです。 通帳やカード・印鑑の「保管場所」も忘れずに記載してください。 相続対策は、最短5日間でできます。まとまった時間が取れる年末年始は絶好の機会です。ぜひ、始めてみましょう。 *本記事は、板倉京著『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成しています。
板倉 京