参院6増で導入、分かりにくい「特定枠」 坂東太郎のよく分かる時事用語
自民だけではなく野党にもメリット?
今回の「6増」は7月6日に参議院で審議入りして、5日後の11日には参院通過。13日から衆議院で審議入りして、18日に可決、成立という素早さでした。この間、衆参で審議した時間は約9時間。与党の公明党も当初は別の案を出していましたし(否決)、ふだんは与党と是々非々の日本維新の会を含む全野党が反対したにもかかわらず、です。何としても成立させたい自民が強行し、数の上で圧倒的劣勢の野党を蹴散らしたというのが表向きの見え方です。 ただ「6増」は、連立与党の公明や、野党にとっても悪い話ではありません。まず選挙区は度重なる定数是正で45選挙区のうち32が「改選1」となっています。主要野党が候補者を一本化して臨んだ16年選挙で与党は21勝11敗。やはり自民・公明のタッグは強い。 反対に大都市を抱える1都3県や北海道、愛知、大阪、兵庫、福岡の9選挙区は「改選3」人以上です。 改選3人だった埼玉は近年、自民・公明・野党で分け合ってきましたが、民主党(当時)に勢いがあった2007(平成19)年選挙で公明が苦杯をなめたケースも。そこで改選1増となるのは公明にとって安心材料です。この辺は連立与党へのプレゼントか、法案賛成への呼び水か。 2016年選挙で、改選3以上の選挙区において議席を得た野党は主に民進党(当時)でした。他に大阪を地盤とするおおさか維新の会(当時)が大阪と兵庫の両選挙区で当選。曲がりなりにも野党第一党であった民進が分裂して混乱している現在、野党各党にとって比例代表の存在は一層大きくなるでしょう。 特定枠についても、小政党の社民党や自由党も含めて比例でどうしても当選させたい者を保護できるメリットはあるでしょう。そうした事情を見透かしての採決強行だった……と観察するのは、野党に対して失礼でしょうか。
--------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など