参院6増で導入、分かりにくい「特定枠」 坂東太郎のよく分かる時事用語
改正理由は? どんな課題がある?
今回の公職選挙法改正は議員の身分に関わる問題なので、内閣が国会に提出する法案(閣法)ではなく「議員立法」によるものでした。したがって、成立したのは自民党案。改正案の提案理由として、人口の少ない県の民意を国政に届けたいというものがありました。しかし憲法43条は「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定めます。どこの選出でも国会議員は「全国民を代表」しなければならないので、筋が通らない部分もあります。過疎地域の民意反映が目的だとすると、参議院の選挙区選出議員は全国民ではなく地元住民だけの代弁者だと言うようにも取れます。過疎や人口減少が大きな課題で今の国会で軽視されているというならば、国会そのもののあり方を議論するのが先でしょう。 行政監視の機能強化も理由に挙げています。これも「参議院議員を6人増やせば進展するのか」といえば、甚だ疑問。例えば森友学園問題で噴出した財務省による決裁文書改ざん問題では、「財務省=行政機関」が1年にもわたって国会(立法府)をあざむいてきた大事でした。行政監視がそれほど重要ならば、与党であっても「立法府をだますとは許せない」と厳しくただすべきなのに、そうはしませんでした。 国会議員を減らせばいいというものではない、という意見には一理あります。本来、間接民主制は、少しでも多くの有権者の意見を議員を使って国政に反映すべきであり、そのために議員増という手段が有効だと。でも……、今現在の国会のあり方から、「なるほど。では議員を増やそう」と納得できる国民が多く存在するものでしょうか。 課題として第一に挙げられるのは前述の通り、比例代表のあり方が一層複雑になって、もはや“意味不明”に陥る点です。そもそもドント式を理解している有権者がどれほどいるか、などと偉そうに書いている筆者も、仕事柄(こうした記事の執筆)覚えなければ食えないので仕方なく理解しているだけです。 だいたい、今までの非拘束名簿式ですら問題点が多々みられます。例えば全国的に名の知れた候補者が大量の票を集め、その候補者は当選するにしても、票はあくまでも所属政党にカウントされるので、その有名人の名を書いた有権者が支持していない別の候補者の当選をアシストしかねません。 反対に、政党名が大多数で候補者名を書いた票があまりなかった場合、わずかな候補者名しか集めていなくても当選してしまうという例も生じます。その結果、政党名投票が少なくて落選した候補の個人名得票が、当選者を上回るという現象がすでに起きていて、特定枠はそれに拍車をかけるでしょう。