プロテスト合格から苦労の17年 女子プロの生き方/横山倫子の半生(後編)
「きれいなスイングゆえに…」苦悩のプロ生活
横山はその後、ステップアップツアーを主戦場に置きながら、レギュラーツアーにも何度か顔を出した。ただ、彼女の中ではどうしても拭えないコンプレックスを抱いていた。それは、絶対に優勝するぞという気概がないこと。幼少期からコツコツと美しいスイングを磨いてきた彼女にとって、スイングが多少乱れても、メンタルで圧倒する優勝者の姿を見て、自分はこうにはなれないと感じていた。 「バーン! と力強く打っていくタイプに憧れました。自分はどうしてもスパーン! ときれいに打ててしまう。ないものねだりかもしれませんが、優勝する人にあって自分に足りないものは何なのか? そればかりを常に考えていました…」
未勝利。しかもレギュラーツアーに継続して出られない。思うような結果が残せない日々を送る横山から、2018年にスポンサーが撤退を要請してきた。「精神的に絶望に落とされました。もうここまでかと…」 「スポンサーがなければプロの資格はないのと一緒。まだ自分はやれると意固地になっても、それを他人から言い渡されたら終わり。そのときにゴルフができることの有難さ、プレーできることが当たり前ではないことを痛感しました。知り合いの紹介で何とか新しいスポンサーを見つけ、選手生活は続けることができましたが、周りから応援や援助してくれる人が居るからこそ、私たちプロが成り立っている。ゴルフ生活が送れていることに感謝しようと心に決めました」
プロにとっての「目標」「結果」はたったひとつなの!?
すでにベテランの域にかかっていた横山だが、挑戦意欲は衰えず、アジアン、カナディアン、台湾、また欧州ツアーへ。活躍の場があれば世界中どこにでも赴いた。
「プロになったからには、もっと活躍して有名にならないとけいない。横山倫子というプロゴルファーを演じ続けなければいけない、という気持ちは常に先行していました」。精神的にも余裕がなく、焦りばかりが先に立つ毎日…。そんなとき、欧州での経験が気持ちを楽にしてくれた。 「選手としてはピークを過ぎていましたが、海外で予想以上のスコアを出せて自信が付いたり、海外選手の楽しそうなプレーを見て考え方が変わったり…。まずプロである前にひとりの人間。人生をもっと愉しまないと。プロにとって優勝することだけが目標ではないのかもしれない、と思うようになったのです」 視点はひとつでなくてもいい――。プロにとって優勝こそ「目標」であり、優勝こそが唯一の「結果」と見られている。だが、プロ自身の存在意義はそれだけではないはず。横山は17年間自分を追い詰め続け、あまりにも視野が狭くなっていたことに気がついた。