「退職金を株式投資で増やす」と言い出した父に不安…元証券マン・相続の専門家が解説する、退職金運用のリスクと“3つの重要ポイント”
退職金は老後資金として非常に重要な資金です。しかし、退職金を「投資で増やす」と聞いたら、どのように感じるでしょうか。退職金の一部を安全な運用に回し、家族に負担をかけない選択肢はあるのでしょうか。本稿では、一般社団法人証券相続普及協会の代表理事である小林裕氏が、「父が『退職金は株式投資で増やす』と言っており、不安を抱いている」という相談をもとに、退職金を株式投資に充てることのメリットとリスクについて解説します。 都道府県「公務員の定年退職金」ランキング…<2022年・一般行政職>
「退職金を株式投資に回す」ことは賢明な選択か?
ある時、「父が『退職金は株式投資で増やす』と言っています。結局、家族の負担になるのではと不安です……」という相談を受けました。 株式投資というと確かに「資金が増える」イメージがあるかもしれません。お父様も何らかの勝算があってのことかと思います。ただし、退職金というのは老後の資金として替えのきかない大事な資金です。ですので、「資金が減らないように増やす」ということを実現できるようなリスクとリターンのバランスを取ることがポイントとなります。
15年の証券業界で得た教訓……栄光の裏に潜む危険
私は岡三証券株式会社に約8年勤務した後に、独立系ファイナンシャルアドバイザー(通称:IFA)として現在8年目になります。証券業界に携わって合計15年以上になりますが、個別銘柄の良い経験も悪い経験も数多く見てきました。 特に、退職金のような大切なお金が万が一値下がりした場合の影響を考えると、心配がつきません。私が大学を卒業し、岡三証券株式会社に入社したのは2009年4月です。当時はリーマンショックがあり、日経平均は1万円割れ。ほとんどの方が大きな損失を抱えていました。 そこから時は流れ、日経平均は今年7月には4万2,000円を突破しました。栄光も挫折もあるのが株式市場と言えるかもしれません。一方で、時代の変化についていくことができず、経営破綻により上場廃止となりただの紙切れとなってしまった株式もあります。 例えば、日本航空(2010年)、タカタ(2017年)、レナウン(2020年)などは一世を風靡した企業ではありますが、上場廃止になった過去があります。上場廃止には至らずとも、依然として株価が低迷している企業も多く存在しています。