「日本で女性議員が増えない大きな理由のひとつは、ハラスメントでした」支援活動に走り回った研究者が痛感した、構造的な問題の根深さ
2009年の春、大学3年生だった浜田真里さん(36)は、1年休学して世界一周の旅に出た。将来は海外で働くことも考えていたためだ。帰国後の就職活動の際、海外で働く選択肢に関する情報が少ないと感じていた。そこで、国際的に活躍する日本人女性へのインタビューを始め、内容をまとめたサイト「なでしこVoice」を開設した。 宴会になぜコンパニオン?男性議員の回答に思わず脱力 北海道・ニセコ町唯一の女性議員が実感した議会のハラスメント
インタビューは卒業後、マレーシアやタイで働き出してからも続け、男性も含めて千人を超える。ただ、話を聞く中で女性の多くの言葉に共通点があると気付いた。たとえば、こんな声だ。 「以前は日本の商社に勤めていた。ずっと海外駐在を希望していたけれど、ポストが空いても、後任は後輩の男子ばかり選ばれた。理由は、女性社員が『結婚や出産で退職するリスクがある』と思われているから。いつ実現するか分からないから会社を辞め、海外で就職した」 日本社会に存在する、ジェンダーをめぐる構造的な問題が、女性たちから活躍する場を奪い、国外に流出させている。「背景についてきちんと理解したい」。30歳を前にそう考えた浜田さんは日本に戻り、大学院でジェンダー問題を学ぶ。やがて、政治分野におけるジェンダーギャップの原因のひとつの根底に「ハラスメント」があることに気付いた。どういうことか。(共同通信=池田知世) ▽女性の生きづらさの根本は政治にある
海外生活に一区切りを付けて帰国した浜田さんはお茶の水女子大大学院に進み、ジェンダーと政治が専門の申琪栄教授に師事した。 学んでいく中で、女性が生きにくい社会構造となっている原因は「社会のルールである法律の制定を担う国会」や「地域の条例を決める地方議会」に、女性議員が少ないからだという確信を強めた。研究を通じて広く課題解決に役立ちたいと、政治の世界に向き合う道を歩んだ。 中でも取り組んだのはハラスメント。この問題に行き着いたのは、女性である自分が議員になりたくない理由を考えた時にハラスメントの存在が浮かんだからだ。そこで、先行する研究状況を調べたところ、海外にはたくさんあるものの、日本ではほぼ見当たらない。それなら、自分が取り組もうと決めた。 日本で研究が少なかったのはなぜか。こう考えた。「研究対象となる女性議員がそもそも少なかった。また、学会に参加してみても、周りは男性ばかり。研究する側にも女性が少なく、だからハラスメントがテーマになりにくかったのだろう」