「日本で女性議員が増えない大きな理由のひとつは、ハラスメントでした」支援活動に走り回った研究者が痛感した、構造的な問題の根深さ
ハラスメントをテーマとした論文に取りかかった。まず、女性の地方議員や議員経験者に話を聞くと、想像以上にひどかった。共通した被害内容も多く、中でも新人議員の被害がひどい。こんな被害を受けていた。 「当選後すぐの1期目の頃は、Facebookで友達になると、メッセンジャーで『あなたの活動を教えて下さい。会いましょう』と言ってくる人が多かった。実際に会ってみると、結局『彼女を探しています』、『彼氏はいないんですか』という目的の人が結構いた。びっくりした。議員ってお嫁さん探しの場だっけ?と思った」 「駅前での街頭演説(駅頭)を本当にしたくなくなってしまった。人と一緒じゃないと怖い。体を触ってくる人もたまにいて、しかも犯人がわからないことが多い。それが一番ストレスで、駅頭は怖いなと思った」 研究を通して見えてきたのは、地方議員当選後の支援不足だ。 ハラスメントは、加害者との間に「クッションとなる人」がいるかどうかで、被害者が受けるダメージは大きく異なることがヒアリングで浮かび上がってきた。特に、地方議員は、国会議員のように公費で秘書を雇える制度はなく、政党に所属しない無所属も多い。間に立つ人が少なく、孤立しがちだ。
そこで、女性地方議員が孤立して苦しむ状況をなくそうと、「第三者として間に入る」サポートプロジェクト「Stand by Women」を2021年5月に始めた。 この時期、ハラスメントが女性の政治参画を阻む要因として少しずつ認識されつつあった。その年の4月に内閣府が公表した地方議員対象のアンケート調査では、こんな結果が出ていた。 議員活動中の課題として「性別による差別やセクシャルハラスメント」を挙げた女性議員は34.8%。一方、男性議員は2・2%にとどまった。当選までの課題として同様に挙げた女性議員は24.9%、男性議員は0.9%だけ。いずれも大きな差だ。 2021年6月には、政治分野の男女共同参画推進法改正で、ハラスメント対策が国や地方自治体に義務付けられてもいる。 Stand by Womenの開始から約2年がたった今春は、4年に1度の統一地方選挙があった。研究とサポートの成果を生かす時が来た。