「日本で女性議員が増えない大きな理由のひとつは、ハラスメントでした」支援活動に走り回った研究者が痛感した、構造的な問題の根深さ
浜田さんは女性候補を支援すると同時に、選挙ボランティアをする上での注意点をまとめたしおりを作成。インターネット上で無料公開した。女性議員を増やそうとボランティアをしたくても、経験がないために不安に感じる人たちに活用してもらう狙いだった。作成したしおりは2023年10月時点で6000枚以上配布し、現在もプロジェクトのサイト上で提供を続けている。 活動はそれだけではない。ハラスメントについては、女性候補や議員からの相談に無料で応じるセンターも開設した。 さらに、女性を選挙から遠ざける一因は、「子育て」を念頭に置いているとは思えない今の選挙制度にある。そう考えた浜田さんは、子どもを同伴した「子連れ選挙」を昨年の参院選で経験した元候補者らと共に、子育て世代の女性候補を支援する「こそだて選挙ハック!プロジェクト」も展開した。 ▽「地殻変動」は感じたが… 幸い、統一地方選では41道府県議選をはじめ、各種選挙の候補者や当選者に占める「女性数」や「女性率」が従来の記録を軒並み更新した。
「地殻変動が起きつつある」と確かに感じた。 しかし、まだまだ議員の圧倒的多数は男性。今回の支援活動を通じ、特に痛感したのは、地域的な偏りだ。大都会に比べ、地方ではまだまだ女性が当選しづらい。同じようにジェンダー平等を訴えているのに、なぜ結果が異なるのか。背景に何があるのか。新たな研究課題となった。 相談センターに寄せられた相談からは、各政党による「公認」の問題も浮かび上がった。公認を得る過程での、さまざまなステークホルダーから受けるハラスメント。政治生命に関わる点では、有権者や支援者からの「票ハラ」より深刻と言えるかもしれない。加害者との関係の断ちにくさ、公認基準のあいまいさが、ハラスメントの温床になっている。 ▽もっともっと女性議員を増やすために 女性議員をもっともっと増やしたい。ただ、浜田さんの頭の中に「自ら立候補」という考えはない。当事者という立場になると、ハラスメントのことはどうしても声を上げづらくなる。また、党派を超えた議員からのヒアリング調査や相談対応もしづらくなるだろう。自分の立場だからこそできる研究や支援活動を通じて、女性が政治の舞台にチャレンジしやすい環境を整えていきたいと考えている。
最近では、個人で発行が可能な出版物「ZINE」の仕組みを活用し、女性の政治参加についてまとめた小冊子も出版した。女性議員を増やすには、投票や立候補する以外にもさまざまな方法がある。選挙ボランティアも一例だ。それを可視化したいと考え、ボランティア向けのしおりも付録としている。もちろん、ハラスメント問題も取り上げた。 この小冊子のタイトルは「女性議員を増やしたい」。 「日本には女性の政治家が少ないという問題意識を持った人が、何かできることを見つけるきっかけになれば」。 気軽に手に取れるようにと、薄く、軽く、小さい形にした一冊に、溢れるほどの思いが込められている。