ホラーのような怖い現実が多数 マンガ「教育虐待」が描き出す恐ろしい真実
社会において学歴というものが必ずしも必要のない時代になったにもかかわらず、受験ブームの中で学歴に対する思いがエスカレートしやすい状況が生まれてしまっています。僕はここにも問題を感じています。 ■若い世代にも情報を届けたい ――今回、書籍とは別にマンガという方法でも世に出されました。なぜマンガにしたのですか? 『教育虐待』として最初に出したのは新書版の本ですが、新書はどちらかというと大人が読むものです。教養を身につけたいとか、昔被害に遭った記憶がうっすらとある大人が、あれは虐待だったんだと再確認するために読むような人が読者層としては多い。
ただ僕自身としては、今まさに教育虐待を受けている子など、もう少し若い世代にも情報を届けたいという気持ちがありました。読者層をもっと下の世代に下ろしたかった。 先ほども言いましたが、教育虐待というのは家庭という密室の中で行われます。しかし密室で何が行なわれていたかは、ノンフィクションではなかなか書けない。殺人事件は公判で何が行われたかが立証されますが、教育虐待は殺人でもない限り、表に出てこないんです。
しかも教育虐待について子どもに聞いたところで、本人がまだ幼く、それをきちんと説明できないこともある。そう考えたときにマンガという形であれば、物語という形で逆に現実を見せることができる。マンガという媒体、メディアが非常に合っていると思いました。 ――教育虐待という虐待があることを広く認知させるということですね? そうです。教育虐待の犠牲者は、自分が教育虐待を受けているという認識がない場合が多い。一般的な虐待でも子どもが「悪いのは自分」と思い込んでいることがありますが、教育虐待の場合も同じです。悪いのは勉強ができず、家族に迷惑をかけている自分なんだと思ってしまう。だから余計に表面化しづらいのです。
また、教育虐待は都市部の話だと思われることもありますが、地方にも存在します。地方では、中学受験の勉強にお金をかけられる家庭というのは経済的にゆとりのある家庭、たとえば医者の家庭などにある程度限られてきます。地方の名門一貫中学なんかに行くと3割から4割がお医者さんの子どもだなんて学校もあるほどです。 地方の私立中高一貫校では医学部進学率が高いのですが、それは、医者の子が多いという背景もあるように思います。しかし、医者の子どもが実際に親と同じくらいの偏差値を取れるかというと、そうではない。でも、親は期待しますから、子どもに圧力がかかります。