「日本人は忘れてはならない」宮崎駿監督がマニラ市街戦の大量虐殺を風化させないように呼びかける【マグサイサイ賞受賞式のメッセージ全文】
スタジオジブリの宮崎駿監督が11月16日、「アジアのノーベル賞」といわれるマグサイサイ賞を受賞。フィリピンの首都マニラで開かれた授賞式で宮崎監督は欠席したもののメッセージが読み上げられました。 【画像集】宮崎駿監督が「日本人はこのことを忘れてはならない」と訴えた、1945年のマニラ市街戦の記録写真 宮崎監督は太平洋戦争中、旧日本軍がマニラの市街戦で多くの民間人を虐殺した行為について触れて「日本人はこのことを忘れてはならないのです」と訴えました。
「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞
マグサイサイ賞は、飛行機事故で在任中に死去した第7代フィリピン大統領のラモン・マグサイサイ氏を記念して1957年に創設されました。アジアの平和や発展に尽くした個人や団体に贈られ、「アジアのノーベル賞」とも呼ばれています。 マグサイサイ賞の理事会は、宮崎監督の受賞理由について「アニメで人間の状況を照らし出すことに生涯をかけた、才能ある模範的な芸術家」と称えました。
多くの民間人が亡くなったマニラ市街戦とは?
宮崎監督が受賞メッセージで訴えた民間人殺害は「マニラ大虐殺」とも呼ばれています。 Dialogue for Peopleによると、日本軍は1941年12月8日の真珠湾への攻撃後、アメリカ統治下のフィリピンに上陸。1942年1月にはマニラを無血占領しました。 その後、太平洋戦争末期にフィリピン奪回を目指すアメリカ軍がマニラに攻め込み、日本軍は抵抗しました。これが1945年2月3日から1カ月間行われた、マニラ市街戦です。 この日米の戦いに巻き込まれて、マニラ市民10万人が亡くなったと言われています。 一橋大学学長で歴史学者の中野聡氏は、「マニラ戦の実像と記憶」という原稿の中で、「近年の戦史研究は、民間被害の6割を日本軍による殺戮、4割を米軍の重砲火による死亡と推定している」と説明しました。 また、「マニラ戦は、民間人を大量虐殺するなどの日本軍による戦争犯罪の舞台」となったとも記載しています。 宮内庁公式サイトによると、2016年に当時の天皇皇后両陛下のマニラ訪問に出発する際、マニラ市街戦での民間人の犠牲について、以下のように述べました。 「マニラの市街戦においては、膨大な数に及ぶ無辜のフィリピン市民が犠牲になりました。私どもはこのことを常に心に置き、この度の訪問を果たしていきたいと思っています」