【サッカー日本代表】新たな戦い方で躍動、W杯2次予選全勝で最終予選へ
サッカー日本代表が6月11日、広島で行われた2026年ワールドカップ(W杯)アジア2次予選B組最終戦でシリア代表と対戦し、躍動感溢れる攻撃で5-0と快勝。 【動画】遠藤航 × 佐々木久美|サッカー日本代表と日向坂46のキャプテンが特別対談企画!チームへの想いを熱く語る 6戦全勝の無失点で9月から始まる最終予選進出を決めた。 FW上田綺世選手(フェイエノールト)、MF堂安律選手(SCフライブルク)、MF相馬勇紀選手(カーザ・ピア)、MF南野拓実選手(モナコ)らが得点し、MF久保建英選手(レアル・ソシエダ)は2ゴールに絡む活躍を見せた。 すでに1位突破を決めていた日本は、予選突破には勝利が絶対条件だった2位のシリアに対して、6日にアウェイで勝利したミャンマー戦に続いて採用した3バックが機能。 前節から先発9人を入れ替えて臨み、前半半ばの約10分間で3ゴールを挙げて相手を圧倒した。 これまでにも勝利を収めた2022年W杯のドイツ戦など試合中に守備に重きを置いた3バックに変更することはあったが、今回の2連戦では攻撃力を上げる狙いを持って試合開始から採用。 選手がそれぞれの個性を発揮して連係し、大量得点を生み出した。 中でも目立ったのがミャンマー戦に続いて先発した中村敬斗選手(スタッド・ランス)と堂安選手の両ウィング。4-4-2を基本にしたシリアに対して、サイドのスペースを活かして次々と攻撃を仕掛けた。 中村選手は周囲の選手と連係しながら左サイドをトップスピードで駆け抜けて、鋭利なクロスを繰り出して決定機を多く演出。 この形で作った前半8分のチャンスはゴール前に入ってきた久保選手が左足で狙って、わずかに枠を外れたが、5分後は同様の形で中村選手が上げたクロスに、ゴール前で相手DFの間を獲った上田選手がヘディングで決めた。 上田選手は「配置のイメージもつきやすかったし、ボールも受けやすかった。前線のイメージはうまく合わせられた」と振り返った。 速いテンポで攻撃を畳み掛ける日本は、19分には自陣左サイドでボールを得た中村選手が久保選手へ預けると、久保選手がドリブルで運び、相手に倒されながら堂安選手へパス。 堂安選手は右から中へ切り込んで左足を鋭く振って2-0とした。 久保選手は22分の3点目も演出。左サイドでボールを受けて持ち上がり、ペナルティエリア左から顔を出した南野選手へパスを送ると、これが相手DFの足に当たってゴールに吸い込まれた。 是が非でも勝ちたいシリアもボールを奪うと日本の3バックの脇のスペースへ素早く蹴り出してクロスを入れる場面を何度か試みたが、日本はDF町田浩樹選手(サンジロワーズ)、DF板倉滉選手(ボルシア)、DF冨安健洋選手(アーセナル)が冷静な対応。 MF遠藤航選手(リバプール)の相手の攻撃の芽を摘む働きで、ほとんど得点機を作らせなかった。 3-0リードで前半を折り返すと、日本は選手交代を機に4バックに変更。冨安選手を右サイドバックで起用し、交代出場した選手が攻撃を活性化させて得点を重ねた。 後半15分過ぎから出場したDF相馬勇紀選手とMF鎌田大地選手が4点目を演出。 ボランチに入った鎌田選手が送った鋭いスルーパスに反応して相手DFの裏を取った相馬選手が、ペナルティエリア左端で倒されてPKを獲得。これを相馬選手が決めて4-0とリードを広げた。 5点目は途中出場のMF川村拓夢選手(広島)のパスを受けて攻め上がった相馬選手が相手に倒されてボールを失うが、川村選手、相馬選手、南野選手でパスコースを限定。 交代出場で後半から左サイドバックに入ったDF伊藤洋輝選手(シュツットガルト)がインターセプトして素早く南野選手へ渡すと、南野選手が中央へ切り込んで右足で決めた。 この結果、日本は6戦全勝の1位で最終予選へ進出。2位は、シリアに勝ち点1差で迫っていた北朝鮮がミャンマーに4-1で勝って3勝3敗で、2勝1分け3敗のシリアを抜いて2位に入り、突破を決めた。ミャンマーは1分け5敗の4位で終了した。 森保一監督は、攻撃的3バックの導入について「3バックと4バック、どちらもチームとして戦術的に機能させて、選手たちが対応力を持って戦えるように、次のステージの戦いに向けて戦術変更した」と説明。 「3バックはこれまでも試合のなかでやってきたが、よりボールを握る形の中で良い攻撃を仕掛ける、良いチャレンジをしてくれた。一つのオプションとしてチームで共有できた」と評価した。 指揮官は、守備陣のレベルアップがあって、戦術の幅を広げる取り組みができていると指摘。 「日本も世界で存在感を示している前線の選手は多くなったが、DFラインの選手たちも世界の舞台で力を発揮し、存在感を見せてくれる選手が多くなっているので、いろいろな起用ができる」と語った。 選手にも攻撃的3バックの手法は概ね好評だ。 遠藤選手は「ミスマッチを作りながら試合を進めて、狙っていた形でゴールを奪えた。最終予選でもできればチーム力も上がると思う」と述べて、冨安選手も「新しいシステムでトライして、ビルドアップでもノッキングとかなかった。個人的には前半はやりやすかった」と話した。 南野選手は、「ボールを握ったときの僕の感覚、味方同士の距離感とか握りやすさなどは3の方がいいかと。1つのオプションという意味ではよかったと思う」と続けた。 一方で、「もう少し良いレベルの相手とやらないと分からない」(鎌田選手)、「相手が強くなった時に僕らがどれくらいできるかが大事」(町田選手)などと、真の評価はレベルの高い相手との対戦を待ちたいとする声も選手たちから異口同音に聞こえた。 だが、アジアの強敵が揃う最終予選を前に、2試合で先発を大幅に入れ替えながら新たなオプションを試すことができたのは、今後へ向けてプラス材料に違いない。