『監察医 朝顔』が年始に放送されたあまりに大きな意義 上野樹里の名演が“記憶”を繋ぐ
上野樹里が主演を務める『監察医 朝顔』(フジテレビ系)が、『監察医 朝顔2025新春スペシャル』として約2年ぶりに帰ってきた。 【写真】まだ幼い! 2021年のクランクアップ時の永瀬ゆずな(当時・加藤柚凪) これまで第1シーズン(2019年7月~9月)、第2シーズン(2020年11月~2021年3月)、スペシャルドラマ(2022年9月)と5年半に渡って続いてきた『監察医 朝顔』。放送当日に朝顔一家が晴れ着を着た家族写真が公開されていたが、『監察医 朝顔』こそが新春ドラマとして相応しい作品であるということをオンエアを観て改めて気付かされた。それは『監察医 朝顔』が纏うゆったりとした空気感が年のはじめにぴったりだということ。 『監察医 朝顔』は、法医学者の朝顔(上野樹里)が遺体の死因を究明して残された人々の心を救っていくさまを描く物語。朝顔の勤める法医学教室と桑原(風間俊介)のいる野毛山署が連携しながら解決していく事件のサスペンス要素はありながらも、そこには朝顔たちの日常が地続きにある。朝ごはんとお弁当の用意、子供たちの送り迎え、夜のお風呂。2年という月日の経過と子供たちの成長を感じさせながらも、桑原家に流れる温かな空気は何も変わらないということを強く実感する。 存在感を発揮しているのは、長女・つぐみ(永瀬ゆずな)と次女・里美(中村千歳)の娘たち。つぐみはおそらく9歳の小学3年生となり、朝ごはんを「ダイエット中だからいらない」と仏頂面で拒否。「中村くん」というクラスメイトの名前が朝顔から飛び出し、桑原をハラハラさせるおませな年頃の女の子になっている(前回の彼氏の「総ちゃん」とはどうなったのか?)。 一方でお姉ちゃんとして里美の面倒を見る場面も多くあり、前回はまだ喋ることができなかった里美が自由奔放に桑原家の一員として加わっていることが嬉しくなる。朝顔から夜ご飯何がいいかを聞かれ、「朝ごはん」と答えるその発想(もちろん脚本上)と純粋無垢な表情が未来を楽しみにさせてくれる。風間俊介がSNSで綴っている、永瀬ゆずなのInstagramに「パパは成長が嬉しいよ」とコメントしようとしたが受付拒否されたというエピソードがなんとも微笑ましい。 桑原や朝顔が担当する連続自死事件は、やがて平(時任三郎)が刑事時代に追っていた事件、そして監禁事件へと繋がっていく。犯人・府木原を演じるのはゲスト俳優の酒向芳。幼い娘を殺され、30年以上犯人を憎しみ続けた末の悲しい復讐劇。刑事としてはあるまじき行為ではあるが、移送中の府木原を娘の遺体と再会させる桑原。そこには同じ親としての思いと、認知症が進み娘を忘れゆく府木原に義父の平を重ねていたのだろう。やっと会えた、間に合った「おかえり」。骨壷を前に涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった府木原=酒向の名演に観ているこちらも思わず涙してしまった。『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)で演じた澤田の最終盤の立場、芝居もそうだが、2024年から2025年に突入してもなお酒向のバイプレイヤーとしての存在感、さらに演技が冴え渡っている印象だ。