【追憶の中山金杯】02年ビッグゴールド 忘れた頃にやってきた、金杯といえば「金」
かつて「金杯は“金”にまつわる馬が連絡みする」と、まことしやかに競馬場やウインズ近辺でささやかれた頃があった。 84年1着ドウカンヤシマ。ドウを「銅」と読めばカネ偏だ。 85年1着スズパレード。「鈴」パレードでカネ偏。 86年1着クシロキング。「釧路」の「釧」はカネ偏。 87年1着トチノニシキ。「錦」はカネ偏。 88年1着アイアンシロー。アイアンはすなわち「鉄」。カネ偏。 89年1着ニシノミラー。ミラー「鏡」はカネ偏。 怖いばかりのカネ偏オンパレードだが、この不思議な符号は89年を最後にパタッと止まってしまう。 しかし…。金は忘れた頃に降ってくるのだ。02年。東京で行われた中山金杯を勝ったのは、その名もずばり、ビッグ“ゴールド”だった。 真っ先に反応したのが中尾正師だった。「がははは。ホンマ、金杯っちゅうのは金に縁があるんやな。こりゃ、ビッグなゴールドメダルやで」。笑顔いっぱいのえびす顔で殊勲の管理馬を出迎えた。 横では柴田善臣が指揮官の勢いに押されて苦笑いだ。この年、3度目の年男を迎えた。「追い出しを我慢すればG1でも活躍できるんじゃないかな」 ひょうひょうと勝ったように見せている柴田善だが、実はおせちもそこそこに、この一戦に向けて準備していた。2走前、武豊を背に秋の東京で準オープンを勝った一戦のビデオを繰り返し見た。そこで、直線坂下まで仕掛けを遅らせることを決めた。 中尾正師の名調子は続いた。「1番人気か。馬名のせいもあるんかなー。昨年暮れの悪夢を忘れさせてくれる正月になったよ」。悪夢とは前走の鳴尾記念。勝負どころでステッキがたてがみに絡まり、役に立たなくなるアクシデント。ビッグゴールドは9着に敗れていた。 2着は最軽量51キロの13番人気タフグレイスで馬連は万馬券。獲ったファンにとってはビッグなお年玉となったことだろう。