タワマン修繕積立金不足で「廃虚化」の信憑性 60年110億円の維持費をどう確保するか
憧れの住居のシンボルであるタワーマンション。しかし、数十年後には修繕積立金が不足して、多くのタワマンが「廃墟化する」と予見する専門家は少なくない。この説にはどのくらい信憑性があるのか。 * * * ■タワマン修繕積立金不足「3つのワケ」とは なぜ、タワマンの維持費は懸念されるのか。株式会社さくら事務所のマンション管理コンサルタント、土屋輝之さんに話を聞いた。 土屋さんは、「設備のメンテナンス費用が通常のマンションよりかかる」と指摘する。たとえば、エレベーターの取り換え費用だ。 「20階建てぐらいまでのエレベーターの取り換え費用は、1台あたりせいぜい2500万円程度です。でも、40階、50階建てのマンションになると、1台につき1億円と一気に跳ね上がるのです」(土屋さん、以下同) タワマン独自の設備もある。災害時の救助で使用される非常用電源付きエレベーターは、高さ31mを超える建物に設置が義務づけられており、多くのタワマンに備えられている。交換費用は1台1億5000万円程度になることもある。 そのほか、火災時の救助に使用する屋上のヘリポートや高層階へ水を運ぶための給水ポンプなど、タワマンには特殊な設備が多く、メンテナンス費用が高額になりやすい。 コンシェルジュが24時間体制で勤務していたり、共用部分の施設ににジムやサウナなどの施設があったりするケースも多く、管理費もかさむ。 ■必要な水準より低く設定 2つ目の理由は、所有者が毎月積み立てる修繕積立金の設定額が、本来必要な水準より安く設定されているケースが多い点だ。土屋さんによれば、近年は改善傾向にあるが、以前は「分譲開始時に月々5000円程度に設定しているマンションも少なくなかった」という。 「一例として、500戸ある超高層マンションの場合、竣工後60年間で必要な修繕積立金の総額はおよそ110億円。1戸あたり月々5000円程度の支払いでは到底足りないので、いつかは大幅に値上げしなければ、大規模修繕を含めた維持管理が実施できなくなります」 3つ目に、この十数年、アベノミクス、消費税増税、東京オリンピックなどを経て、建築物価自体の高騰が続いていることも要因に挙げられる。長期修繕計画を立案した当時は万全の設定だったとしても、物価上昇により破綻するケースも考えられるという。 「修繕計画を立案する際は、毎年0.5~1%程度の物価上昇を織り込んで計算した計画も検討した上で妥当な積立金の額を設定することをお勧めします」
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