タワマン修繕積立金不足で「廃虚化」の信憑性 60年110億円の維持費をどう確保するか
■タワマン1戸あたり60年間で約2200万円の試算も 前述の条件に当てはめて、60年で110億円の修繕積立金を確保するには、1戸あたり約2200万円を用意しなければならない計算になる。60年は720カ月だ。 「720カ月で2200万円となると、入居月から3万円ずつ払っても40万円不足します。1万円ずつしか積み立てていないなら、毎月2万円以上の赤字を出して生活しているのと同じです」 同じ500戸でも、タワマンと100世帯が入居できる建物が5棟並ぶ団地タイプのマンションとを比べると、修繕費用はかなり違う。 「後者の場合、60年間でかかる修繕費用の試算による目安は1戸あたり1600万~1800万円。少なく見積もっても400万円の差が生まれます」 修繕費を1800万円とした場合、1戸あたりの負担は月々2万5000円だ。建物の規模が同じでも戸数が減れば、1戸あたりの住民が負担する金額はより高額となる。実は、程度の差はあるが維持費の負担が大きいのはタワマンも通常タイプのマンションも変わらない。 ■「維持費」だけでマンション家賃に マンションに住めば、修繕積立金以外にも維持費はかかる。仮に一般的な構造の総戸数500戸のマンションの管理費を月々2万3000円程度とすると、車を所有している場合は駐車場代が月々1万5000円、固定資産税、都市計画税を月割りの額に換算した金額はおおむね1万円だ。ざっくりとだが、修繕積立金を含めて合計すると月々7万3000円程度かかる計算だ。 「タワマンでなくても、維持費だけで、単身用マンションが借りられる金額です。毎月これだけの維持費を負担しながら、住宅ローンや日々の生活費、子どもの学費なども支払わなければならない。そもそも、マンション所有者の金銭の負担は非常に大きいのです」 ■積立金を支払えなくなったら 分譲マンションでは、積立金が支払えなくなる住民が出ることは珍しくない。 支払えなくなった住民は、マンションを売却してほかの住まいに移り住むか、滞納するかのいずれかだ。滞納が半年続くと、滞納分全額を回収できなくなるケースも少なくない。 「管理の厳しいマンションは、3~6カ月以上滞納したら、すぐに弁護士に委託し『期日までに支払わなければ裁判所に競売の申し立てをする』と伝えます。でなければ、未収金が増えるばかりだからです」 滞納したら即、弁護士――。残酷に見えるかもしれないが、滞納した住民にとっても管理組合にとっても、滞納額が少ないうちに売却したほうが、競売より「プラスに働くケースが多い」という。特に都内の物件は値上がり傾向にあり、売却益を得られる可能性が高いからだ。
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