「猫推しの街」に異変が…!東京・谷中の「夕やけだんだん」から猫が消えた理由
猫の幸せ。とは
自由に生きる野良猫を捕まえて去勢、不妊処置をすることに疑問の声もある。 「でもね、野良猫のハードな現実を知れば知るほど、考えてしまいます。 野良猫に不妊手術をしないまま餌をやっていたら、1年に2~3回子猫を産んで、あっという間に数が増えていきます。猫が増えたら増えただけ、トラブルも増える。猫が好きな人のためにも嫌いな人のためにも、猫のためにも、不妊手術は必要なんです。 猫って、かわいいじゃないですか。かわいがってくれる飼い主に出会って、暑さ寒さのしのげるおうちに住んで、毎日餌をもらって、にゃん!とか言ってるほうがよっぽど幸せなんじゃないかな、と私は思います」(服部先生) 目の前の飢えた猫、傷ついた猫を見て、放置しておくことは悲しい。獣医師や保護団体らの尽力は、確実にその命を救っている。他方で、野良猫を動物病院に連れてきて、ボランティアに押しつけて終わり、というケースも後を絶たないのだという。 「一度手を出したら、命への責任が生じます」(前同) 科学ジャーナリストの竹内薫さんはこう指摘する。 「理想は、たくさんの野良猫がいて人の生活と共存できる街。イスタンブールなんかはいいなあと思います。でもそれには、そもそもの街の作りだったり、文化だったり、猫に関する事情だけではない、包括的な状況が必要なんです。 いま日本は、とくに東京などの都会は、都市計画も脆弱で、人にとってもけっして暮らしやすい環境ではない。ここで、猫が幸せに暮らせるとは思えませんよね。野良猫が生きやすい社会は、人にとっても生きやすいはず。大きな視点で課題を解決していくしかありません」 猫には猫の猫生がある、と想田監督は言う。もちろん、人には人の人生がある。わたしたちの社会を、幸せに生きられる社会にしたい。猫を愛するひとたちの眼差しは、けっこう遠くを見ている。
現代ビジネス編集部