「猫推しの街」に異変が…!東京・谷中の「夕やけだんだん」から猫が消えた理由
外敵の正体
「野良猫の生活は、ものすごくハードなんです。飼い猫の寿命は12~13歳といわれていますが、いまはどんどん長生きになっていて、15歳を超える子はざら。なかには20歳くらいまで生きる子もいます。 でも野良の猫は、2~3年で死んでしまうことも。生まれて、子猫のうちに死んでしまう子もいますし、成長しても、暑さや寒さ、事故、それに外敵によって、命を落とすことも多い」(服部先生) 外敵のひとつはヒトだという。野良猫や鳥に、暴力をふるう人間がいるからだ。捕獲された保護猫が、明らかにわざとつけられた傷を負っているケースもみられる。 「猫好きはたくさんいますが、大嫌いという人もいます。庭に排泄をするとか、植木をいたずらするという苦情は絶えません。その人たちにとって地域猫は、邪魔な存在なんです。 捕獲した猫は、原則的には元の場所に戻すのですが、人になつく可能性が高い子猫には里親を見つけて、飼い猫への道をサポートします。病気やケガで弱っている猫は、この病院の子として最期まで面倒を見ることもあります」(前同) こうして、東京など都市部では地域猫の保護活動が進み、不妊手術を受けた猫はその証として耳に切り込みが入った「さくら猫」として生き、「一代限り」の命をまっとうする。
瀬戸内海の港町の猫神社を映画にした理由
映画監督の想田和弘さんは、瀬戸内海の港町でドキュメンタリー映画『五香宮(ごこうぐう)の猫』を撮影した。 「ニューヨークに27年暮らして、2021年に岡山県牛窓に移住しました。ここで古くから親しまれている鎮守の社(やしろ)に、たくさんの野良猫がいたんです。僕も妻も猫が好きで」(想田監督) 想田監督は「観察映画」という独自のスタイルでドキュメンタリー作品を作り、国内外で高い評価を得ている。『五香宮の猫』は、その10作目になる。作品には、五香宮境内の清掃奉仕や、花木を育てる近隣の人々のようす、遠方から猫に会いにくる人、そして猫たちの日常が映し出されている。 猫たちに餌をやる人と糞尿問題に悩む人の意見は相入れない。TNR活動で捕獲された猫が、シートをかぶせた金網のなかで一夜を過ごすようすは、なんだか「かわいそう」に見える。 「野良猫の多い街はいい街だ、というのがぼくの思いです。けれども、それぞれの立場で意見があります。敵か味方か、どちらが正しいかという答えを求めるのではなく、なんとか折り合いをつけること。映画には、そんな姿が映ったと思います」(前同) 都市部でも、地方でも「猫のこと」は人の心を揺るがせるのだ。